フェニルヒドラジン(その他表記)phenylhydrazine

改訂新版 世界大百科事典 「フェニルヒドラジン」の意味・わかりやすい解説

フェニルヒドラジン
phenylhydrazine


ヒドラジンH2NNH2のフェニル置換体。融点19.6℃,沸点243℃,101.6℃/5mmHg。沸点付近で分解が起こるので減圧蒸留によって精製する。無色の板状晶または液体。かすかに芳香臭があり,ほとんどの有機溶媒に可溶。水にはほとんど溶けない。空気,光に不安定で,徐々に黄色から暗赤色に変化する。保存には光,空気を遮断する。有毒なので注意を要する。

 アニリン亜硝酸ナトリウム塩酸で処理し,生成するベンゼンジアゾニウム塩亜硫酸で還元して合成する。塩基性で,種々の酸と塩をつくる。ヒドラジンと同様ケトンアルデヒドと反応し,難溶性のフェニルヒドラゾンを生じ,希薄溶液でも濁りが認められるので,糖質化合物,ケトン,アルデヒドの分離,確認の試薬として用いられる。

またアンチピリン原料とされる。
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化学辞典 第2版 「フェニルヒドラジン」の解説

フェニルヒドラジン
フェニルヒドラジン
phenylhydrazine

C6H8N2(108.14).C6H5NHNH2.ヒドラジノベンゼンともいう.ベンゼンジアゾニウム塩を亜硫酸塩あるいは塩化スズ(Ⅱ)などで還元すると得られる.融点23 ℃,沸点241~242 ℃,137~138 ℃(2.4 kPa).1.0978.1.6081.空気中で酸化され褐色となる.エタノールエーテル,ベンゼンに可溶.弱い塩基性を示し,普通,塩酸塩の形で用いられる.アルデヒドやケトンと反応してフェニルヒドラゾン,またα-ケトールと反応してオサゾン結晶を生成するので,これら化合物の確認試薬として用いられる.また,ピラゾールやピリダジンなどの複素環化合物や染料の合成の原料にも用いられる.LD50 188 mg/kg(ラット,経口).[CAS 100-63-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェニルヒドラジン」の意味・わかりやすい解説

フェニルヒドラジン(データノート)
ふぇにるひどらじんでーたのーと

フェニルヒドラジン

 分子式 C6H8N2
 分子量 108.1
 融点  19.6℃
 沸点  243℃
 比重  1.0978(測定温度20.3℃)
 屈折率 (n)1.6083


フェニルヒドラジン
ふぇにるひどらじん
phenylhydrazine

ヒドラジンの誘導体。ヒドラジノベンゼンともいう。純粋なものは無色。空気と光にさらすと黄色から暗赤色になる。ベンゼンジアゾニウム塩を亜硫酸ナトリウム、塩化スズ(Ⅱ)などで還元して合成する。弱い塩基性があり、種々の酸と付加化合物の塩をつくるが、普通、塩酸塩の形で取り扱われることが多い。水にはほとんど溶けないが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルにはよく溶ける。毒性があるので取扱いには注意を要する。カルボニル化合物と縮合してヒドラゾンを、糖と反応してオサゾンを、酸と反応してヒドラジドを生じるので、これらの化合物の分離、確認のための試薬として重要である。

[務台 潔]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェニルヒドラジン」の意味・わかりやすい解説

フェニルヒドラジン
phenylhydrazine

化学式は C6H5NHNH2 。ベンゼンのジアゾニウム塩を亜硫酸,塩化スズ (II) などで還元してつくられる無色板状晶または液体。融点 23℃,沸点 241℃。有毒。一酸塩基で,種々の酸と付加化合物の塩をつくる。アンチピリンの原料,または糖類,ケトン,アルデヒドに対する分離や確認の試薬である。

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