改訂新版 世界大百科事典 「フェードー」の意味・わかりやすい解説
フェードー
Georges Feydeau
生没年:1862-1921
フランスの劇作家。作品はおびただしく,《くされ縁》(1894),《マキシム亭のご婦人》(1895),《アメリーを頼む》(1908),《奥方の亡き御母堂》(1910)などが代表作である。いずれも巧妙な筋立て,機知に富む台詞(せりふ),快適でスピーディな動きで観客を笑わせる喜劇であり,生前はパリ劇界の人気作家となったが,死後は一時忘れ去られた。しかし1950年代から再評価の傾向が目だち,コメディ・フランセーズやバロー一座など,大劇団でしばしば再演される。その理由は,表面上軽薄に見える彼の喜劇が,実は状況に操られる人間のロボット性を示しており,人間性を喪失した人間のこっけいさを暴く現代の新しい演劇(とりわけ不条理劇)を予告していたからである。精密機械のような台詞回しといった手法面からもそのことはうなずけよう。
執筆者:大久保 輝臣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報