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フォスフォリパーゼ ふぉすふぉりぱーぜphospholipase

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フォスフォリパーゼ
ふぉすふぉりぱーぜ
phospholipase

リン脂質(フォスフォリピドともいう。脂質とリン酸がエステル結合した化合物)を加水分解する酵素の総称。リン脂質は生体膜を構成する主要な脂質で、(1)グリセロールを骨格とするグリセロリン脂質と、(2)スフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質とがある。狭義のフォスフォリパーゼは(1)のグリセロリン脂質を加水分解する酵素をさすが、広義のフォスフォリパーゼは(2)のスフィンゴリン脂質を分解する酵素も含む。
(1)グリセロリン脂質はグリセロール(グリセリンともいう。炭素数3の炭素鎖にヒドロキシ基-OHが3個ついた化合物)を基本骨格とする。グリセロールの1位と2位のヒドロキシ基に脂肪酸が脱水結合し(これをジアシルグリセロール、ジグリセリドという。脂質の一種)、さらに3位のヒドロキシ基にリン酸が脱水結合し(これをフォスファチジン酸という)、そのリン酸にさらにある種の有機塩基(いずれも塩基性でヒドロキシ基をもつ)が脱水結合した構造をもつ(ヒドロキシ基と酸が脱水結合してできた結合をエステル結合という)。塩基がコリン、エタノールアミン、イノシトールであるものを、それぞれ、フォスファチジルコリン(レシチンともいう)、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトールという。
(2)スフィンゴリン脂質はスフィンゴイド(炭素数18~20の炭素鎖にアミノ基-NH2とヒドロキシ基-OHがついた構造をもつ化合物の総称。炭素20のものをスフィンゴシンという)を基本骨格とする。スフィンゴイドのアミノ基に脂肪酸が結合し(これをアシルスフィンゴシン、セラミドという。脂質の一種)、ヒドロキシ基にリン酸とある種の有機塩基が脱水結合した構造をもつ。塩基がコリンであるものをスフィンゴミエリンという。グリセロリン脂質の各位置を加水分解する酵素があり、それぞれフォスフォリパーゼA1、A2、B、C、Dとよばれる。フォスファチジルコリンの例をに示す。リゾリン脂質(グリセロールの1位あるいは2位の脂肪酸のいずれかがとれたもの)の脂肪酸を加水分解する酵素はリゾフォスフォリパーゼとよばれる。
 フォスフォリパーゼA1(国際生化学連合(現在は国際生化学・分子生物学連合)の酵素委員会が制定した酵素番号はEC3.1.1.32)は哺乳(ほにゅう)動物の脳、肝臓、膵臓(すいぞう)、血小板および微生物に存在する。これらのなかにはリゾフォスフォリパーゼ活性をもつもの、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジン酸を加水分解するものもある。現在のところ、この酵素の生理的役割は明らかになっていない。
 フォスフォリパーゼA2(酵素番号EC3.1.1.4)は原核生物から哺乳動物細胞まで普遍的に存在し、蛇毒・蜂毒に大量に含まれる。生体膜の脂質の再構成に重要である。また、刺激に応じて生成する種々の生理活性脂質(アラキドン酸由来のエイコサノイド、リゾリン脂質由来の血小板活性因子やリゾフォスファチジン酸など)の産生の律速酵素である。
 フォスフォリパーゼC(酵素番号EC3.1.4.3)のなかには、フォスファチジルコリンを加水分解して、ジアシルグリセロールとフォスフォコリンを生成する酵素(細菌、高等動物の脳、肝臓、脾臓(ひぞう)の赤血球などに存在)がある。また、フォスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸を分解して、イノシトール1,4,5-トリスリン酸(IP3)と1,2-ジアシルグリセロール(DG)を産生するフォスファチジルイノシトールリン脂質特異的フォスフォリパーゼC(動植物から細菌に至るまで広く分布)がある。IP3およびDGはセカンドメッセンジャーとして、ホルモンや神経伝達物質の情報の細胞内での発現に関与する。
 フォスフォリパーゼD(酵素番号EC3.1.4.4)はフォスファチジルコリンを加水分解して、フォスファチジン酸とコリンを生成する酵素(動植物から細菌に至るまで広く分布)である。フォスファチジン酸はセカンドメッセンジャーとして働く。
 また、スフィンゴリン脂質を分解する酵素としては、スフィンゴミエリンフォスフォジエステラーゼ(酵素番号EC3.1.4.12)がある。加水分解の位置はフォスフォリパーゼCに相当し、スフィンゴミエリンを加水分解して、N-アシルスフィンゴシンとリン酸コリンを生成する。動物の脳、肺、肝臓、腎臓、副腎、脾臓などに存在。スフィンゴミエリンフォスフォジエステラーゼD(酵素番号EC3.1.4.41)は加水分解の位置はフォスフォリパーゼDに相当し、スフィンゴミエリンを加水分解して、セラミドリン酸とコリンを生成。ある種の細菌の菌体毒素に存在する。[徳久幸子]
『「特集 シグナル交換酵素ホスホリパーゼC」(『細胞工学』1989年12月号所収・秀潤社) ▽森武貞・小川道雄編『膵ホスホリパーゼA2――基礎と臨床』(1991・医学図書出版) ▽室田誠逸編『循環器領域におけるプロスタグランジンの臨床』(1994・メディカルレビュー社) ▽「炎症と免疫」編集委員会編集「特集 炎症とホスホリパーゼ」(『炎症と免疫』1998年1月号・先端医学社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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