翻訳|folk dance
世界各国の伝統的な民衆の踊り。現在の日本では、若い男女がレクリエーションなど交流の場で踊るものをさす場合が多い。原義は民族舞踊とも訳せるが、民族舞踊のことを欧米ではエスニック・ダンスethnic danceといい、フォーク・ダンスとはいわない。厳密にいえば、フォーク・ダンスとは民衆が集団で踊るものであり、宗教儀式的なものや、貴族社会のもの(宮廷バレエ)、職業的な舞踊(ミュージック・ホールや劇場舞踊)を除外したものである。民衆が祭りのときなどに楽しむために踊るもので、輪になったり手を取り合ったりして踊られる。また、祭りのなかから自然に発生したものではなく、フォーク・ダンスに似せて開拓時代のアメリカでつくられたスクエア・ダンスsquare danceなども、現在、民衆の舞踊として機能している。
踊りのパターンはそう多くはなく、〔1〕円形をつくって踊るもの、その円形が二重、三重になるもの、〔2〕四つのカップルが互いに正方形をつくって向かい合うもの、〔3〕長い列をつくって踊るもの、〔4〕男女が向かい合ったり、手を取り合ったりする対舞形式のもの、に大別される。
イギリスではフォーク・ダンスをカントリー・ダンスcountry dance、プレイフォードplayford's、コミュニティ・ダンスcommunity dance、トラディショナル・ダンスtraditional dance、剣舞、モリス・ダンスmorris dance、仮面舞踊に分類している。
[市川 雅]
民俗舞踊。各国各地方の住民がその地域や職業などと密接に結びつくかたちで伝承してきた踊りのことだが,日本で〈フォーク・ダンス〉という場合,明治時代以降紹介されたヨーロッパ系の民俗舞踊をさす。この名称および概念は,中世ヨーロッパにおける宮廷舞踊の発展に対し,フランスのプロバンス地方の農民の間から生まれた舞踊をダンス・ポピュレールと呼んだことに始まるといわれている。日本では,1872年(明治5)の学制公布とともに唱歌と体術(のちの体育)の教科がおかれ,舞踊的教材が〈遊戯〉という名で採用され,これらとともにヨーロッパのフォーク・ダンスの一部が取り入れられた。さらに今日行われているフォーク・ダンスは,第2次大戦後アメリカ軍の進駐により導入されたスクエア・ダンスsquare danceの影響が強い。アメリカのスクエア・ダンスはヨーロッパ系のフォーク・ダンスや社交ダンスのカドリーユから変化したもので,踊り方は方形や輪形,2列形などに組んで,相手が交互に入れかわるところに特徴がある。
→民族舞踊
執筆者:桜井 勤
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