フクロアリクイ(読み)ふくろありくい(英語表記)banded anteater

改訂新版 世界大百科事典 「フクロアリクイ」の意味・わかりやすい解説

フクロアリクイ (袋蟻喰)
numbat
banded anteater
Myrmecobius fasciatus

別名オオムシナメ。オーストラリアにすむシロアリアリを主要な食物とする有袋目フクロアリクイ科の哺乳類。姿はリスに似て,長くふさふさした毛のはえる尾をもつが,吻(ふん)が長くとがり,細長く紐状にのびる舌をもつ。体色は霜降りの帯黄褐色の地に,幅の広い白色の横縞がある。体の後部にいくに従い地色は暗色となる。育児囊発達せず不完全。体長17.5~27.5cm,尾長13~17cm,体重275~450g。ふつう森林すみ,おもに薄暮時に単独で活動してシロアリあるいはアリの巣食う木を捜す。この際にしばしば木に登ることから樹上生の動物と考えられることがあるが,おもな活動の場は地上である。シロアリあるいはアリが巣食う木片を見つけだすと口でくわえて適当な食事場に運び,強力な前足つめで木片を壊し,アリをなめとる。出産期は1~5月。1産2~4子が生まれ,子は四つある乳頭に吸いついたまま育つ。
有袋類
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクロアリクイ」の意味・わかりやすい解説

フクロアリクイ
ふくろありくい / 袋蟻食
banded anteater
numbat
[学] Myrmecobius fasciatus

哺乳(ほにゅう)綱有袋目フクロネコ科の動物。オーストラリア南西部に分布する。頭胴長22~24センチメートル、尾長16~18センチメートル、体重275~450グラム。体形はリスにやや似ているが、吻(ふん)は長くとがり、舌は普通のアリクイと同じように細長く、ミミズ状で長さ10センチメートルぐらい、口の外へ出すことができる。後足の第1指を欠く。体毛は短く粗く、体色は赤みがかった栗(くり)色で、体の後部にいくにつれて暗色となる。背の部分に白い横縞(よこじま)があり、目に黒い筋(すじ)がある。歯は小さくて虫食に適し、52本ある。雌の腹部には育児嚢(のう)があるが、発達は悪くあまりはっきりしない。乳頭は4個ある。ユーカリの森林に単独ですみ、朽ち木のうろや割れ目などに木の葉や草で巣をつくる。主食はシロアリで、長い舌を出し入れしながらなめ取る。普通1産4子で、生まれたばかりの子の目は閉じ、毛も生えていない。飼育はたいへんむずかしく、野生のときと同じような餌(えさ)を与えてもあまり長生きしない。ユーカリの林の開発と、移入されたキツネ、ネコ、イヌなどにより捕食されたために減ったので、保護されている。

[中里竜二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フクロアリクイ」の意味・わかりやすい解説

フクロアリクイ
Myrmecobius fasciatus; numbat

有袋目フクロアリクイ科。体長 23cm,尾長 17cm内外。口先が突き出し,長い舌をもっている。体は黄褐色で,背に白い横縞がある。昼行性。倒木などを前肢を使ってこわし,中にいるアリやシロアリを長い舌でなめとる。1回に4子ほどを産む。育児嚢の発達は悪く,袋にならない。オーストラリア南西部のシロアリが多いユーカリの森林にすむ。

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