イル・ハーン国初代のハーン。フレグとも。在位1260-65年。チンギス・ハーンの孫。13世紀の半ば,兄モンケ(憲宗)の命を受け,各王家から徴発した部族軍とオコデイ・ハーン時代の西方出先機関である〈アゼルバイジャン鎮守府〉〈ヒンドゥスターン・カシミール鎮守府〉の万人隊を指揮下に入れ,西アジアの征服活動を行った。イスマーイール派の諸城塞を攻略して降し,バグダードを陥れてアッバース朝を滅亡させた(1258)。さらに征服活動を進めてシリアに転戦中,モンケの訃報が入ると東帰しようとした。しかし,シリアの守将キトブカKitbuqaがマムルーク朝との戦いに敗れて殺され(1260年,アイン・ジャールートの戦),キプチャク・ハーン国軍も南下してアゼルバイジャンをうかがう気配を見せ,さらに本国ではモンケ没後のフビライ(世祖)と弟アリク・ブケがハーン位継承争いを起こすに及んで帰国を断念した。征服活動に従った麾下の諸部族軍ともどもイランを中心とする征服地に居ついたフレグはイル・ハーン国の開祖となったが,敵国軍の侵入に対処する中,国の基礎がまだ十分に固まらないうちに没した。
執筆者:志茂 碩敏
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