翻訳|blueberry
ツツジ科スノキ属Vacciniumの低木群で,藍黒色から淡青色の液果を房状につける果樹。多くの近縁野生種がヨーロッパや東アジアにある。栽培品種群は北アメリカ北東部の原住インディアンが古くより採集利用していた種のなかから,19世紀末になって栽培化され,開発されたもので,産業的生産の発展はめざましい。果樹産業上で重要なものはハイブッシュ・ブルーベリー(V.australe SmallとV. corymbosum L.を含む。英名high bush blueberry),ラビットアイ・ブルーベリーV. ashei Reade(英名rabbiteye blueberry),およびローブッシュ・ブルーベリーV. angustifolium Ait.ほか(英名low bush blueberry)の3群である。ハイブッシュ・ブルーベリーは北アメリカ東岸のジョージア州からメーン州にかけておよびミシガン州南部に野生があり,高さ4mほどにもなる。やや冷涼な気候とかなり強い土壌酸度,水湿を要求するが,果実の品質は優れ生食にも適する。ラビットアイ・ブルーベリーは大きなものでは高さ4m以上になり,ジョージア州近傍の原産。温暖地向きで水湿や土壌酸度への要求がゆるく栽培しやすいが,品質はやや劣る。ローブッシュ・ブルーベリーは高さ20cmくらいで,北アメリカ北東部からカナダ東部にかけての寒冷な荒地に自生し,最も耐寒性がある。いずれも釣鐘状の花を房状に咲かせ,扁球形で重さ1~2gの果実をつける。果実の表面にライトブルーの果粉(ワックス)を多くまとっているものが高品質とされる。
これら北アメリカ産のブルーベリーは,ドイツ,オーストリアその他にも導入され栽培されているが,日本に導入されたのは1950年代である。繁殖は挿木により,栽培には土壌酸度を適正にしてピートモスを混ぜ,おがくずを敷き,ツツジに似た肥培管理をするとよい。鉄欠乏,毛虫,鳥害に注意し,剪定(せんてい)は軽くする。収穫は果実全体がブルーになってから行う。甘味酸味が適度にあり,風味に優れ,生食のほか多くはパイなどの洋菓子原料や,冷凍,缶詰に加工し,ヨーグルトやアイスクリーム用として利用する。家庭栽培や摘取り園用栽培にも適し,鉢植えにもなる。
北アメリカではほかにもマウンティン・ブルーベリーV.membranaceum Dougl.,エバーグリーン・ブルーベリーV.ovatum Pursh.,ドライランド・ブルーベリーV.pallidum Ait.などが食用とされている。いわゆる野生のブルーベリー類(近縁種)である。日本産の近縁種クロマメノキ,クロウスゴ,ナツハゼやシャシャンボの果実も黒青色で食用になるが,栽培化はされていない。ブルーベリーを地方名でハックルベリーと称することもあるが,真のブルーベリーは細かい数十個の種子を含むのに対し,ハックルベリーは黒く熟し,10個以下の大きい種子があり食用に適しない。
執筆者:松井 仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ツツジ科(APG分類:ツツジ科)スノキ属の低木。北アメリカ原産で二十数種がよく知られる。いずれも小果樹として利用される。おもな栽培種はアメリカの東部に多いハイブッシュ・ブルーベリーV. corymbosum L.(染色体数2n=4x=48)、北東部とカナダに多いローブッシュ・ブルーベリーV. angustifolium Aiton(2n=2x=24)、北東部からカナダに多いダウニスワンプ・ブルーベリーV. atrococcum Heller、北東部に多く、果実が赤く熟すクランベリーcranberry/V. macrocarpon Aiton(いずれも2n=2x=24)や南東部に多いラビットアイV. ashei Reade(2n=6x=72)などである。これらは一般に葉肉は厚く、葉形は卵形から長卵形、全縁で長さ1センチメートル、多くは落葉性である。4~5月に白色の小鐘状花を房状につける。
果実は球または扁円(へんえん)形で1~1.5グラム。夏から秋にかけて熟し、濃青黒、濃紫、濃いえび茶、赤色などとなり、果面に灰白色の果粉をかぶる。甘酸っぱく、ジュース、タルト、パイ、ジャム、砂糖煮、プリザーブ、缶詰などにする。
[飯塚宗夫 2021年5月21日]
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出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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