ムコタンパク質ともいう.多数のグリコサミノグリカン(2糖の繰り返しからなる糖鎖=ムコ多糖)がコアタンパク質に共有結合した分子.主として結合組織の細胞外マトリックスに存在し,保水力があるため,関節では潤滑剤の役割も果たす.グリコサミノグリカンとしては負に荷電したコンドロイチン硫酸,デルマタン硫酸,ヘパラン硫酸などがある.糖鎖の割合が極端に高く,通常の糖タンパク質とは区別する.コンドロイチン硫酸,デルマタン硫酸,ヘパラン硫酸は
Galβ1→3Galβ1→4Xylβ→Ser
を介して,ケラタン硫酸は
GlcNAcβ→Asn
を介してポリペプチド(コアタンパク質)に結合する.1本のポリペプチドに何本ものグリコサミノグリカン鎖が結合した細胞外マトリックスプロテオグリカンと,多くても2~3本程度のグリコサミノグリカン鎖が結合して,ポリペプチドの一部が細胞膜を貫通している細胞表面プロテオグリカンの2種類がおもに知られる.細胞外マトリックスプロテオグリカンは,結合組織の細胞外マトリックス中の基質を形成しており,たとえば,軟骨組織のプロテオグリカン複合体であるアグリカン(aggrecan)は,弾性の高いクッションの役割を担っている.アグリカンは,ケラタン硫酸とコンドロイチン硫酸が結合したプロテオグリカン(分子量2.5×106)が,さらにヒアルロン酸鎖にそって,リンクタンパク質を介して,非共有結合的に何本も結合した巨大構造体(分子量2.5×108)である(図).アグリカンは糖と硫酸基を利用して非常にたくさんの水分子を取り込むことができるため,固めのスポンジのようなショックアブソーバーとしてふるまう.細胞表面プロテオグリカンの一つであるシンデカン(syndecan)は,細胞表面上で起こる繊維芽細胞成長因子(FGF)とそのレセプターの結合を二量体として安定化する.この際,シンデカンがもつ硫酸基やカルボキシル基は,FGFやFGFレセプターのもつ塩基性基と接着するのに用いられる.FGFレセプターは細胞内のチロシンキナーゼドメインの活性調整によりシグナル伝達を行うが,この活性発現には二量体形成が必須であるので,シンデカンの存在はきわめて重要である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
タンパク質と多糖の結合した物質で,おもに動物の細胞間組織の構成成分である。糖タンパク質と異なるのは,糖タンパク質ではタンパク質の占める割合が高いが,プロテオグリカンでは多糖の比率が高い点である(70%が多糖)。多糖部分はムコ多糖で,ムコ多糖の名まえの前にプロテオ(タンパク質の意)を冠して呼ぶ。プロテオコンドロイチン硫酸は動物の軟骨などに多く,細胞間組織の主成分である。プロテオデルマタン硫酸は,哺乳類の真皮,腱などでコラーゲン繊維とともに存在する。プロテオヒアルロン酸は,動物の関節液,眼球の硝子体や結合組織に存在する。プロテオヘパラン硫酸は,細胞膜に存在するという点で他のプロテオグリカンとは異なる。プロテオケラタン硫酸は,角膜,椎間板,軟骨などに存在し,コンドロイチン硫酸と共存する例が多い。ヘパリンもタンパク質と結合してプロテオグリカンを形成するが,他とは違い,細胞内成分として存在する点が特徴である。
執筆者:柳田 充弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…コンドロイチン硫酸の研究は,名古屋大学の鈴木旺らが開発した特異的分解酵素コンドロイチナーゼを使用することによって急速に進んだ。この多糖鎖は遊離の形ではなく,タンパク質と共有結合したプロテオグリカンとして組織中に存在している。糖部分とタンパク質部分の結合はキシロースとセリンのO‐グリコシドであり,弱アルカリ処理によって解裂する。…
…炭水化物が光合成植物のみならず,多くの動物組織においても主たるエネルギー源となっている理由としては,遊離型で直ちに利用できる単糖と,貯蔵型の多糖の相互変換が比較的容易に酵素的に行われるという炭水化物の特性が考えられる。 第2の機能は形態構築であり,この役割を果たす多糖として,セルロース,細菌細胞壁の多糖,そして高等動物の基質中のプロテオグリカンやヒアルロン酸(ムコ多糖)などをあげることができる。これらの分子が形態上の機能を果たしうる理由はさまざまであり,以下のいずれかに対応する。…
…粘液細胞では核は基底近くに偏在し,疎面小胞体でつくられたタンパク質成分とゴルジ体でつくられた糖成分とから成る糖タンパク質が顆粒(かりゆう)となって細胞を満たしている。粘液の成分はさまざまであるが,糖成分がムコ多糖となったムコ多糖タンパク質,すなわちプロテオグリカンがよく知られている。なお,結合組織の基質もムコ多糖や糖タンパク質から成り,粘性が高いので粘液として扱われる。…
※「プロテオグリカン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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