翻訳|proteomics
1990年代中ごろより台頭してきた分子生物学の研究分野の一つで、生物の重要な構成要素であるタンパク質の構造や機能を総合的に解析する技術の総称。生物の細胞や組織などに存在するタンパク質(プロテイン)全体をプロテオームとよぶが、プロテオミクスはプロテオームの網羅的解析を表す用語であり、プロテオーム解析ともよばれる。生物の遺伝子情報全体を表すゲノム、またゲノムの包括的解析を表すゲノミクスという造語を生みだしたゲノム科学は、いまやバイオテクノロジー研究の主要分野を構成している。ゲノムに続いて、プロテオームや、生物の代謝から生まれる物質やその代謝系全体を示す「メタボローム」などのような用語が生まれている。いずれも、分子生物学の研究領域の細分化や拡大とともに登場した造語であり、これらは、ポストゲノム時代のバイオテクノロジーの重要テーマに位置づけられている。
プロテオミクスでは、質量分析法や電気泳動法、タンパク質どうしの相互作用などを解析する技術などが主として用いられており、それによってタンパク質の構造や状態(発現)、さらにタンパク質の機能性・動態などについての情報が得られる。こうしたプロテオミクスの成果は、新しい医薬品の効率的な開発や疾病のメカニズムの解明などに利用できる。たとえば、疾患プロテオミクスとよばれる病気の原因や症状などに関連するさまざまなタンパク質を特定する研究が活発に進んでいる。実際に、癌(がん)の高精度診断に役だつバイオマーカー(生物マーカー。診断分野では、生体内の状態、とくに生物学的変化を量的な変化として示すことが可能な物質を示す。これにより診断や治療による変化を把握・評価する)の開発も期待される成果の一つである。さらに、こうしたプロテオミクスの活発化は、ベンチャー企業の誕生を促す一因にもなっている。
[飯野和美 2016年5月19日]
『綱澤進・平野久編『プロテオミクスの基礎』(2001・講談社)』▽『マルコム・A・キャンベル他著、松尾洋監訳、佐藤翻訳事務所訳『ゲノミクス・プロテオミクス・バイオインフォマティクス入門』(2004・オーム社)』▽『丹羽利充監修『最新プロテオミクス・メタボロミクス――質量分析の基礎からバイオ医薬への応用』(2007・秀潤社)』▽『中山敬一・松本雅記監修『明日を拓く新次元プロテオミクス――医学生物学を変える次世代技術の威力』(2009・学研メディカル秀潤社、学研マーケティング発売)』▽『日本プロテオーム学会編『プロテオミクス辞典』(2013・講談社)』▽『近藤格編『医学のあゆみ251巻10号 臨床プロテオミクス』(2014・医歯薬出版)』
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