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ヘリコプターマネー ヘリコプターマネー helicopter money

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デジタル大辞泉の解説

ヘリコプター‐マネー(helicopter money)

あたかもヘリコプターから現金をばらまくように、中央銀行あるいは政府が、対価を取らずに大量の貨幣を市中に供給する政策。米国の経済学者フリードマンが著書「貨幣の悪戯」で用いた寓話に由来。中央銀行による国債の引き受けや政府紙幣の発行などがこれにあたる。ヘリコプタードロップ。ヘリマネ。
[補説]中央銀行は通常、市場に資金を供給する際、対価として民間金融機関が保有する国債手形などの資産を買い入れる(買いオペレーション)。ヘリコプターマネーの場合、そうした対価を取らずに貨幣を発行するため、中央銀行のバランスシートは債務だけが増え、それに見合う資産は計上されず、債務超過の状態になる。その結果、中央銀行や貨幣に対する信認が損なわれる可能性があるため、平時には行われない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ヘリコプターマネー
へりこぷたーまねー
helicopter money

政府・中央銀行が、あたかもヘリコプターから紙幣をばらまくように、対価をとることなく、大量の貨幣を市中に供給すること。ヘリコプターから国民に対して紙幣をばらまいたと仮定すると、国民は「資産」が増えたと認識して消費支出にあてると考えられる。ヘリコプターマネーとは、そうした効果をねらった政策をもさす。これを現実に当てはめると、政府が需要拡大のために利付国債を市場で発行して財政出動(減税や歳出拡大)しても、国民がその元利金の将来の支払い(増税や歳出削減)を予想してほとんど使わずに貯蓄に回してしまうと、現在の需要は政府が予想するほどには増えない。しかし、政府が市場で利付国債を発行するかわりに、政府が発行する無利子・永久債を中央銀行が永続的に引き受ければ、国民は将来の債務負担をしなくてすむため、安心して現在の総需要を拡大していくと考えられる。ヘリコプターマネーは、ミルトン・フリードマンが1969年に最初に提唱した金融政策である。
 日本銀行は、2013年(平成25)4月から、いわゆる異次元緩和を実施してきたが、2014年4月の消費税率引上げと、同年なかばからの原油価格の下落もあって、インフレ率が低水準で推移し、物価上昇率対前年比2%の達成が見通せない状況が続いた。世界的にみても、ヨーロッパ中央銀行(ECB)などの主要中央銀行が同時期に非伝統的な金融緩和政策を実施したが、十分な総需要を生み出せず、低インフレが長期化した。そこで、2015年前後からは、金融緩和だけで総需要を拡大するのは不十分なので、財政出動で総需要を創出すべきとの見解が、世界の著名な学者・有識者やメディアの間で急速に広まった。たとえば、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の前議長ベン・バーナンキ、ニューヨーク市立大学のポール・クルーグマン、イギリス・金融サービス機構(FSA:Financial Service Authority)の長官を務めたアデア・ターナーAdair Turner(1955― )などが日本を念頭に置いて導入を主張したことで、ヘリコプターマネー、あるいはマネタイゼーション(金融政策による財政ファイナンス)ということばが急速に広まった。
 ヘリコプターマネーの基本的な考え方には、1回限りの紙幣供給、中央銀行による無利子・永久債の永続的引受けといった前提がある。何度も繰り返せばインフレが加速し、もはや紙幣供給が資産とはみなされなくなるからである。しかし、近年のヘリコプターマネーを提唱する見方のなかには、かならずしもこのような定義を厳密に用いずに、政府と中央銀行の政策協調、すなわち、政府が財政拡大を実施している間に、中央銀行が多額の国債買入れなどの非伝統的金融緩和を実施することに絡めて言及することもあり、用語の混乱が生じている。
 日本では、財政法第5条により、日本銀行による、市場からではない国債の直接引受けは原則禁止されている。また、ECBもEU法によって財政ファイナンスが禁止されている。さらに、アメリカでは連邦準備法のもとでFRBによる国債の直接引受けが禁止されている。こうしたことからも、主要中央銀行は、きわめて異例な経済状況でもない限り、ヘリコプターマネーを選択肢とすることはなく、かつ実践的な課題が大きいという見解でほぼ共通している。一方で、金融政策と財政政策が同一方向にあると政策効果が高まるため望ましいという見解、いわゆる政策協調の重要性については肯定的にとらえられることが多く、実際に日米欧の中央銀行もそうした言及をすることが多くみられる。[白井さゆり]

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