ヘリコプター(英語表記)helicopter

翻訳|helicopter

デジタル大辞泉 「ヘリコプター」の意味・読み・例文・類語

ヘリコプター(helicopter)

主翼・推進機をもたず、機体上方の大きな回転翼によって浮力・推進力を得る形式の航空機。回転翼の取り付け角を制御して上下・前後・左右に飛行し、空中停止もできる。滑走路も不要であるが、速度は遅い。ヘリ。

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精選版 日本国語大辞典 「ヘリコプター」の意味・読み・例文・類語

ヘリコプター

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] helicopter ) 機体の上に取りつけた大型の回転翼をエンジンで駆動して揚力と推進力を得る航空機。回転翼の角度を変えることによって水平方向の移動を行なう。垂直に離着陸し、空中での停止も可能。ヘリ。
    1. [初出の実例]「ヘリコプターに乗った鳥子がこの次はどこを目当てで、宣伝ビラをまいているだろうと」(出典:外燈(1952)〈永井龍男〉回転扉)

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改訂新版 世界大百科事典 「ヘリコプター」の意味・わかりやすい解説

ヘリコプター
helicopter

回転軸に取り付けられてその軸のまわりを回転する翼を回転翼,またはローターrotorといい,このローターを動力で回転させ,発生した揚力を利用して飛行する航空機をヘリコプターという。helicopterは,らせんを意味するギリシア語のhelixと,翼を意味するギリシア語のpteronとを合成して作られたことばである。ふつうの固定翼機(飛行機)では,前進することによってはじめて翼に揚力が発生し,しかもその大きさは飛行速度の増加とともに増すので,一定の速度以下では飛行できない。これに対してヘリコプターの場合,ローターを回転させるだけで揚力が発生できるので垂直に離着陸できるとともに,空中に静止,すなわちホバリングhoveringすることも可能である。

ローターによる飛行のアイディアの最初は,古く中国の竹とんぼにさかのぼるといわれる。15世紀になってレオナルド・ダ・ビンチはらせんねじ型ローターをもつ回転翼機のスケッチを残しているが,人が乗って飛行できるヘリコプターが作られたのは20世紀に入ってからである。まず1907年,フランスのコルニュPaul Cornuが前後にローターをつけた機体で,わずか地上30cm,20秒という短時間ながらもヘリコプターの初飛行に成功,その後もアメリカのバーリナー兄弟による2個のローターをもつヘリコプター,スペインのL.ペスカーラによる複葉2段の共軸ローター(上下合わせると20枚ものブレードがついていた)をもつもの,ドイツのA.G.vonバウムハウエルによる単ローターのヘリコプターなどが試作された。これらのうち,バウムハウエルのそれは,今のヘリコプターとほとんど同じような機構を備えていたが,やっと地面近くで浮いたにすぎない。

 2個のローターをもつヘリコプターは,その後フランスのL.ブレゲーやドイツのH.フォッケにより著しく改良され,1937年にフォッケが製作したフォッケ・アハゲリスFw61ヘリコプターは,改良ののち滞空時間1時間20分49秒を記録,最初の実用ヘリコプターとなった。ロシア生れのアメリカ人シコルスキーIgor Ivan Sikorsky(1889-1972)も初めは双ローターに挑んでいたが,40年になってVS300と呼ばれる単ローター機により自由飛行に成功,翌年にはFw61の記録を破る1時間32分の飛行記録を樹立した。この機体はホバリングを含むほぼ完全な飛行性能を備え,初めは尾部ローターが3個もあったが,のちにこれを1個とし,今日見られるヘリコプターの基本型となった。

ローターを構成する細長い翼のことをローター・ブレード,または単にブレードという。そのブレードが水平面内を適当なピッチ角(羽根角)で回転すると上向きに揚力が発生する。この原理は飛行機のプロペラと同じである。単に重量を支えるだけであれば,ピッチ角を制御することでこの揚力を増減させ,垂直方向のつりあいと運動を実現することが可能である。この際,ローターの駆動に伴う反トルクを打ち消す必要があるが,これは2個の同型のローターを互いに反対方向に回すか(双ローター型),1個を主回転翼として揚力を受けもたせ,反トルク用の尾部ローターを垂直面に配置する(単ローター型)方法が採用される(図1)。

 ローターの各ブレード先端部の周速度は,通常音速より若干低い200~300m/s程度なので,ブレードに働く揚力および遠心力はそれぞれブレード重量の約100倍および1000倍といった大きい値となる。そこで,これらの力が駆動シャフトに対称にかかるように,ブレード枚数は2枚以上がふつうで,とくに後述の前進に伴う不平衡空気力に基づく振動を減らすには,ブレードの数は多いほどよい。

ヘリコプターが前進すると,各ブレードに流入する空気速度は機の前進速度とブレードの回転速度との合成されたものとなるので,図2に示したように,ブレードの前進側で大きく,後退側で小さくなる。発生する揚力の大きさは空気速度の2乗に比例するので,揚力に不平衡が生じ,転倒モーメント(図の例では左へ倒そうとする横揺れモーメント)が生まれる。この不平衡モーメントを打ち消すには,前進側でブレードのピッチを減らし(揚力が減る),後退側でそれを増やすという,ブレード1回転ごとの周期的なピッチ変化が必要である。これをサイクリックピッチ制御という(これに対して,すべてのブレードのピッチ角を同時に同量だけ制御することはコレクティブピッチ制御という)。

 不平衡モーメントを打ち消す別の方法は,ブレードの根もとにヒンジ(フラッピングヒンジ)を設けて,ブレードにフラッピング運動を起こさせて不平衡空気力をなくすことである。そのメカニズムは次のとおりである。まずホバリング時では,コレクティブピッチを大きくとるほど(失速しない範囲で),したがって揚力が大きいほどブレードは上がる(これをフラップアップという)が,揚力よりは1桁は大きい遠心力のために,そのフラッピング角は数度以内に抑えられてつりあう。したがってブレード回転面は,ブレードのハブ取付部分から先端に向かって頂角の大きい円錐面となる。このときの円錐の斜面と底面のなす角をコーニング角と呼び,ホバリング時にはフラッピング角と一致する。コーニング角はコレクティブピッチが大きくなるほど大となる。この状態で回転翼が前進した場合を考えよう。速度の大きくなった前進側でブレードの揚力が増え,速度の小さくなった後退側で揚力は減る。この揚力不平衡は前進側でブレードのフラッピング軸まわりの上昇(フラップアップ)を,後退側で降下(フラップダウン)を促し,その結果,前進側ではブレードの迎え角の減少(したがって揚力の減少)を,後退側では迎え角の増加をもたらし,先の速度差に基づく揚力不平衡を迎え角差で打ち消すようになる。そしてこのフラッピング運動は,ブレード先端が前方で最高点,後方で最低点になるように,ブレード先端回転面の後方への傾きをも与えることになる。その傾きの大きさは,フラッピング軸がちょうど回転中心にあるようなシーソー型ローターでは,フラッピング軸がないときに,モーメント不平衡を消すためにとられたサイクリックピッチ角と同じ値となる。そこで,回転翼によって生ずる揚力は,先端回転面にほぼ垂直に働くので,先端回転面とともに後方に倒れた揚力の方向を元に戻すには,前述のサイクリックピッチ制御を導入すればよい。それよりさらに大きいサイクリックピッチをフラッピングヒンジのあるブレードに導入すると,先端回転面は元の水平面を通り越して前傾する。つまり,サイクリックピッチは先端回転面の傾き,したがって揚力の傾きを制御することができる。もし前方でピッチが減り,後方でピッチが増すようにサイクリックピッチを導入すると,上から見て反時計方向回転のローターでは,ジャイロ効果により先端回転面が左に倒れるし,逆に後方でピッチを減らせば右に倒れる。時計方向回転のローターではこの逆になる。

実際にブレードのピッチ変化を行うには基本的には次の経過をたどる(図3)。通常左手で操作されるコレクティブピッチレバーを上げ下げすると,スワッシュプレートが上下し,ピッチ制御用リンクとホーンを通じてすべてのブレードのピッチが同時に増減する(コレクティブピッチ制御)。これによる揚力の増減で機体の上下方向の運動の制御を行う。次に右手で操作されるサイクリックピッチスティックを前(または後ろ)に倒すと,スワッシュプレートが前傾(または後傾)し,このためピッチ制御用リンクとホーンを通じて各ブレードの前進側でピッチが減少(または増大)し,後退側ではピッチが増大(または減少)する。この結果,ブレード先端回転面が前傾(または後傾)し,それに伴う揚力の傾きによって生ずる水平方向の分力が機体を前進(または後進)させる。通常,回転翼は重心より上方にあるので,重心まわりのモーメントが機体の前(後)回転を促し,なおいっそうの揚力軸の変更を助長する。機体の前(後)進が始まると,前述の不平衡モーメントで先端回転面は元の位置に戻されようとするとともに,回転翼に前(後)方から多量の空気が流入してくる。この結果,同じ揚力を保持するようにコレクティブピッチを制御すると,必要パワーは急激に減少する。ピッチ制御を行わないとパワーは余って機体の上昇に使われる。したがってヘリコプターが垂直に離着陸する代りに,ふつうの飛行機のように滑走離着陸をすると,離着陸に要するパワーは,ホバリング飛行時に比べてはるかに少なくて(約半分で)すむ。さらに速度を増せば,今度は機体抵抗のために再び必要パワーは増大する。ヘリコプターが必要な揚力を保持し,振動の共振を避けるためには,ブレードの回転数は全飛行形態を通じてほぼ一定に保たれることが望ましく,このためガスタービンエンジンでは負荷の変動に対応する燃料制御装置が備えてある。

 初期のヘリコプターには,サイクリックピッチ制御の手段がなかったので,直接シャフトを傾けることで揚力の傾きを得ていた。サイクリックピッチ制御を採用したのは,ペスカーラのヘリコプターで,シャフトに剛に取り付けられたブレードは周期的によじられた。また彼はエンジン停止のとき,安全に降下するため,ブレードのピッチを制御することで,落下に伴う下方からの空気流でローターを回転させるオートローテーションautorotationが利用できるようにした。

 フラッピングの機構はバウムハウエルの最初の単ローターに採用されている。ブレードのフラッピング運動は,わずかではあるがブレード質量の回転中心への移動を引き起こすのでコリオリの力が働き,フラップアップやフラップダウンに応じてブレードを翼面内で前後に揺するモーメントが発生する。これを逃がすためにブレード面に垂直につけたヒンジがリードラグヒンジと呼ばれるもので,フラッピング運動と違ってリードラグ運動ではブレード面が減衰にほとんど寄与しないので,共振を避けるためにダンパーを必要とする。

 ローターの形式はこれらのヒンジの有無により,大きく三つの形式に分けられる。ピッチ角の制御を行うためのフェザリングヒンジのほか,フラッピングヒンジ,リードラグヒンジをもつものを全関節型ローター,フェザリングヒンジとフラッピングヒンジをもつものをシーソー型ローター,フェザリングヒンジのみのものをリジッドローターと呼んでいる(図4)。

ローターのブレード数を増すにつれて前進時の振動が減少するので,シコルスキー社ではブレードの枚数を増していったが,ベル社では木製(のちに金属製)の2枚ブレードで機構の簡単なシーソー型に固執した。スタビライザーバーという安定増大機構と組み合わされたベル社の小型シリーズは広く世界各地で使われた。またボーイング・バートル社は,重心の前後移動に強いタンデムローターの大型輸送機を製作している。

 油圧機器や電子機器の発達や軽量大馬力のガスタービンエンジンの出現は,ヘリコプターの安定性と制御性を増し,飛行を安全なものにした。ベル社のシーソー型ローターではシャフトを長くしてローターを高い位置に置くことで制御能力を上げているが,シコルスキー社のブレードのフラッピングヒンジはハブより若干外側にあって,先端回転面の傾きは揚力軸の傾きにモーメントを加えるので,ハブは低い位置でも制御力が得られる。ドイツのMBB社はBO105で複合材製のブレードを採用し,その可撓(かとう)性を利用することでリードラグヒンジ,フラッピングヒンジをなくし,これで制御能力を高めるとともに,ハブの機構を簡単にし,整備性をよくし,性能を上げた。最近のヘリコプターの多くはこの型式,または類似のローターを採用している。速度の向上とともに,ブレード先端で空気の流れが遷音速になるが,抵抗が増えるのを避けるためと回転騒音を減らすために,ブレード先端を薄くし後退角をつけるようになった。またブレード枚数には限りがあるので,速度とともに増大する振動を抑えるための防振装置も広く採用されている。
執筆者:

ヘリコプターが軍用として初めて使用されたのは第2次世界大戦後期のことで,アメリカはシコルスキーVS316型(軍名R4)を初めて実戦に使用した。このときヘリコプターは敵地に墜落したパイロットを救出するなど,固定翼機ではできない数々の戦功をたて軍用機としての有効性を実証した。その後,朝鮮戦争など数次の戦争で使用され,改良され,かつ多機種に分化し,ベトナム戦争ではヘリボーン作戦空挺作戦)の運用法が確立された。また,数次の中東戦争ではイスラエル,エジプト両軍とも近代戦様式の戦闘の中でヘリボーン作戦や対機甲戦を行った。そしてヘリボーンという戦闘方式が定着し,対機甲戦におけるヘリコプターの有効性が重要視されるにつれてその武装は強化されていき,攻撃ヘリコプターという専門の攻撃用機種が誕生した。また,海軍においては対潜水艦戦と機雷掃海に重用するようになった。

 軍用ヘリコプターの種類としては次のものがある。(1)偵察観測連絡ヘリコプター 小型(全備重量約3t以下)で高性能の機種で,前線のわずかな空地に着陸して偵察や連絡をしたり,ホバリング状態で弾着観測,無線通信中継,あるいはレーザー誘導ミサイルの目標照射などを行う。従来の固定翼機にはできなかった任務まで行うようになったので,各国ともこの種の目的には全面的にヘリコプターを使用するようになった。(2)輸送ヘリコプター ヘリコプターはきわめて狭いところでも離着陸でき,着地できない場合でもホバリングをしながらつり上げつり下ろしができる。さらに地面をはうような低空飛行で敵の目を避けて移動ができる。これらの利点を生かしたのが輸送ヘリコプターで,大型(約10t以上)のものは数十名の武装兵員から重砲,重装甲車両まで輸送でき,破損した飛行機をつり上げて回収することもできる。中型(約4~10t)は10名前後の兵員や軽車両を積み,戦場内の戦術移動などに用いられる。(3)多用途ヘリコプター 現在のものはほとんどが中型輸送ヘリコプターと同じ基本型で,ヘリコプターの諸特徴をバランスよく備えている。その時々の用途に応じ必要な装備を取り付け,救難,偵察,輸送,火力支援,対潜水艦戦などに幅広く使用される。(4)攻撃ヘリコプター この機種は,ベトナム,中東の両戦争の経験などをとり入れて生まれた専門的本格的な軍用ヘリコプターで,中型のものが多い。対ゲリラ戦,対戦車戦,ヘリボーン部隊の護衛や着陸地点の事前制圧など攻撃的な任務に用いられるので,軽快な運動性,がんじょうな構造,堅固な防弾装備,強力な攻撃武器が強く要求される。機体の特徴としては,固定翼攻撃機のような幅の狭いがんじょうな胴体で,乗員の座席は1名ずつ前後に段違いに配置されること,機体の重心位置にミサイルや機関砲などの武器取付けに用いる短固定翼があること,機首部に旋回機関砲を取り付けていること,耐弾防弾の構造になっていることなどがあげられる。(5)対潜ヘリコプター 潜没潜水艦を探知攻撃するため各種の探知装置,誘導魚雷などの攻撃兵器,精巧な自動操縦装置や航法装置を備えている。比較的小型の艦艇からでも発着できること,ホバリングしながら吊下式聴音器やソノブイなどを使用する探知法はきわめて有効であることなどから,対潜ヘリコプターは対潜水艦戦に重要な役割を占めている。(6)掃海ヘリコプター 機雷の発見除去と敷設に使用するヘリコプターで,機雷を積んだり重い掃海具を曳航しなければならないので大型で大馬力のヘリコプターが用いられる。空中からの掃海は,機雷が爆発しても被害は少なく,低空を低速で飛行したり,空中停止ができることは,機雷の発見や掃海にはきわめて有利である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘリコプター」の意味・わかりやすい解説

ヘリコプター
へりこぷたー
helicopter

回転翼航空機の一種。機体の前後方向に対してほぼ垂直な1本または複数の軸に、2枚またはそれ以上の細長い翼(回転翼、ローターrotor)を配置し、エンジンによってこの翼を回転させ、翼に発生する揚力を加減したり、回転翼が描く面(回転面または円板面)を傾けることにより、空中に浮かんだり飛行方向への推進力を得る。普通の飛行機と同じように空中を飛行するほか、地上滑走なしに離着陸したり、左右への横ばい飛行や後退飛行、空中停止(ホバーリングhovering)などを行うことができる。

[落合一夫]

歴史と型式

回転翼による飛行の構想は古く、15世紀末のレオナルド・ダ・ビンチの螺旋(らせん)面回転翼機のスケッチにそれを見ることができる。しかし、その後の400年ほどの間は、多くの人々に試みられながら、軽くて高出力のエンジンが得られずに実現しなかった。1907年、フランスのブレゲーが4個の回転翼をもつマルチローター方式のヘリコプターをつくり、不安定ではあったがごく短時間の浮揚に成功した。1920年にはスペインのド・ラ・シェルバJuan de la Cierva(1895―1936)がオートジャイロの開発に関連して回転翼の独特な現象を発見、その構造を改良し、さらにスペインのペスカラRaoul Pescaraが画期的な同時ピッチ制御を発明した結果、回転翼の性能は著しく進歩した。1935年、ブレゲーはこれらの成果を導入して、同一駆動軸上の2個の回転翼を上下に重ねて配置し、互いに逆方向に回転させる同軸反転式回転翼ヘリコプターを製作した。1937年にはドイツのフォッケHeinrich Fockeが、機体の左右に互いに逆方向に回転する回転翼を配置した並列回転翼式ヘリコプターをつくり、どちらも短時間ではあったが本格的な飛行に成功した。1940年、アメリカでシコルスキーが1個の主回転翼と機体の方向や姿勢を制御する1個の尾部回転翼をもつ単回転翼式ヘリコプターを、パイアセッキFrank Piasecki(1891―1972)が互いに逆方向に回転する2個の回転翼を機体の前後に配置したタンデム回転翼式ヘリコプターを、またカマンCharles Kamanは並列する回転翼の間隔をきわめて狭くして互いに交差回転させる交差反転式ヘリコプターを完成し、現在のヘリコプターの基礎ができあがった。

 ヘリコプターが本格的に実用化されたのは第二次世界大戦後期から1950年の朝鮮戦争にかけてである。この時期に、シコルスキー社が機首にエンジンを配置し、斜め上方に軸を通して回転翼を駆動するという画期的な型式を開発し、重心位置付近に人員・物資を搭載する広い空間を設けることができるようになった。さらに軽量・小型で高出力のタービンエンジンの実用化によってヘリコプターの性能は大幅に向上し、20~30人乗りの旅客輸送や、重量物の吊(つ)り上げ専用など用途に適した機体もつくられるようになった。また、ヘリコプターの型式も機構、重量、性能などの面から実績に基づいて絞られ、現在は単回転翼式、タンデム回転翼式、同軸回転翼式の三つが主流となっている。

[落合一夫]

原理

機体の前後軸にほぼ垂直な回転軸の周りに翼を回転させ、各回転翼の取り付け角(ピッチ角)を同時に加減し(同時ピッチ制御)、回転翼の揚力を増減させることによって上昇、下降、空中停止を行う。また、回転翼のピッチを回転面内で周期的に変化させる(ピッチ周期制御)ことによって、回転翼の描く円板面を傾け、操縦士の思う方向に進ませる。しかし実際には回転翼が回転しながら機体が進むと、回転翼は非対称の相対風を受けることになって、機体が動揺し、翼自体もまた強い遠心力を受けながらピッチを変えなければならないなど、技術的な問題が多い。そのため、回転翼にフラッピングヒンジflapping hingeとドラッギングヒンジdragging hingeを設けて機体の動揺や振動を防いでいる。回転翼にはこのほかに操縦用として、ピッチを変えるフェザーリングヒンジfeathering hingeが必要である。この三つのヒンジをもつ型式の回転翼を全関節式、フラッピングヒンジとフェザーリングヒンジの二つをもつものを半関節式、フェザーリングヒンジだけのものをリジッド型という。大型機はほとんど全関節型である。半関節型のうち2枚の回転翼が交互に上下するものをシーソー回転翼といい、小型機に用いられている。リジッド型の回転翼はもっとも古い型式であるが、動揺・振動が多いので用いられなかったが、材料や設計の進歩で問題点が解決し、現在は主として小型機に採用され、最大速度の向上に貢献している。

[落合一夫]

性能

ヘリコプターの前進速度が速くなると、円板面の前進側の回転翼の相対風速が大きくなるが、後退側回転翼では小さくなる。したがって、後退側回転翼のピッチを大きくする必要がある。しかし、ピッチ角が限界を超えれば失速をおこす。前進側の回転翼は、ことに翼端部で相対風速が非常に大きくなり、音速に近づいて衝撃波を発生して効率の低下、抵抗の増大、失速などを生じることも考えられるが、実際には後退側回転翼の失速のほうが早くおこるのが普通である。どちらにしてもこのような理由で、ヘリコプターの前進速度は時速400キロメートル程度が限界とされている。搭載量は、当初は総重量の30%程度であったが、タービンエンジンの採用によって現在では50%程度にまで増大している。そのほかは一般に固定翼機に比べると、構造が複雑で振動が多く、操縦がむずかしい、機体価格が高いなどの欠点がある。しかし、設計と製作の技術的進歩、新しい機体材料の開発、自動安定・自動操縦装置、全天候飛行用の航法装備の充実などによって、急速に改善されつつある。

[落合一夫]

用途

民間用としては、空中測量、写真撮影、人員・物資輸送、消火救難、報道宣伝、連絡監視などの作業が主体であるが、日本では狭い農地や森林など限定された地域への薬剤散布作業にも使われ、その成果が諸外国から注目されている。定期旅客輸送も一部で行われ、限定された期間ならば採算がとれるようになっている。軍用では、指揮連絡、偵察、武器・兵員輸送、救難活動のほか、特殊装備と武装を施して敵潜水艦の捜索・攻撃に用いられ、また、レーダーや強力な武器を搭載し、被弾を避けるために胴体を極力細くした地上攻撃用ヘリコプターは、機敏な機動力によって局地戦に欠くことのできない兵器となっている。日本では国土が狭いうえ、複雑な地形をもつ関係で、民間用としてかなりのヘリコプターが使われているが、世界的には軍用ヘリコプターが使用機数の大半を占めている。

[落合一夫]

将来

固定翼機に比べて、垂直離着陸、空中停止、左右および後退飛行ができる利点があるが、最大速度、上昇限度、航続距離でまだ劣っている。そこで、この欠点を補うため巡航用の小型固定翼や補助推進装置を取り付けた複合ヘリコプターが試作されており、時速500キロメートルを実現している。さらに高速を目ざし、巡航中は回転翼を折り畳んだり収納してしまう方式も考えられている。なお、ヘリコプターは滑走距離なしで垂直に離着陸するが、回転翼円板を傾けることによって推進力を得るので、VTOL(ブイトール)機には属さないことになっている。

[落合一夫]


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百科事典マイペディア 「ヘリコプター」の意味・わかりやすい解説

ヘリコプター

回転翼(ローター)を動力で回転させ,発生した揚力によって飛行する航空機。ローターの軸は機体にほぼ垂直に取り付けられる。機構が複雑で整備も簡単でないが,垂直に離着陸でき,後進,側進,ホバリング(空中停止)などが自由にできる特徴があるので,軍用をはじめ民間用としても輸送,連絡や各種事業用に広く使用されている。ヘリコプターの試みが始まったのは20世紀の初めで,1907年にフランスのP.コルニュが20秒間の有人飛行に成功したが,最初に実用化への第一歩を踏み出したのは,1937年ドイツのフォッケが製作した双ローター式。1940年には米国のシコルスキーがホバリングを含むほぼ完全な性能をもつ単ローター式を完成して,基礎を築いた。シコルスキー以前は大直径のローターによる垂直軸まわりのトルク(物体を回転させる力)を打ち消すため,2基のローターを逆方向に回転させる方式をとったが,シコルスキーはローターは1基とし尾部側面に設けた小ローターによってトルクを消すことを案出,この方式が現在最も広く採用されている。 ヘリコプターは,通常,独立した推進機構をもたず,ローターブレードのピッチを回転中に周期的に変化させて水平飛行を行う。たとえばブレードが機体の前方にきたときはピッチが小さく,後方ではピッチが大きくなるようにすると,後方では揚力が大きくなってブレードが浮き上がり,前方では下がるので,回転面は全体として前に傾き,前向きの水平分力が生じて機体は前進する。同様にして後進,側進やホバリングも行うことができる。油圧機器や電子機器の発達,軽量大馬力のガスタービンエンジンの出現により,ヘリコプターの安定性と飛行性能は著しく向上し,現在では固定翼機とならんで航空機の一大分野を占めている。
→関連項目オートジャイロ回転翼航空機航空機垂直離着陸機飛行機

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パラグライダー用語辞典 「ヘリコプター」の解説

ヘリコプター

パラグライダーで言うヘリコプターとは、アクロバット飛行の一つの技のことで、丁度、ヘリコプターのプロペラの様にキャノピーを水平に回す事から来た。回転軸を翼の中心に入れてネガティブスピンをかけている。理屈では比較的簡単である為、熟練したパイロットであれば出来そうに考えがちである。しかし、その回転軸をはじめ、速度・停止・逆回転などを自由にコントロールする事は、とっても難しく、見よう見まねで出来るものではない。

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デジタル大辞泉プラス 「ヘリコプター」の解説

ヘリコプター

けん玉の技のひとつ。大皿小皿を挟んで持ち、皿胴のけんじり側に玉を乗せた状態から、けんを水平に一回転させて最初の位置に戻す。右回転でも左回転でもよい。難易度の高い技。2000年、日本けん玉協会により「けん玉の技百選」に選定された。

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世界大百科事典(旧版)内のヘリコプターの言及

【回転翼航空機】より

…これに対し回転翼航空機は,機体が前進していなくとも回転翼を回転させることによって,揚力が得られるので,機体を空中にもち上げられるという特色がある。回転翼航空機には動力で回転翼を駆動するヘリコプターと,機体が前進することで回転翼が自動的に回るジャイロプレーンとがある。前者は機体を前進させるための推進力も回転翼によって得ているが,後者は推進にはふつうの飛行機と同じくプロペラを用いる。…

【航空機】より

…しかし,これに乗り組める乗員,乗客は100人ほどであり,また時速も大きな空気抵抗を受けるため130km/hにとどまった。重航空機は,翼が空気中をある速さで進むときに,翼に生ずる動的空気力(揚力)によって機体の重量を支えるもので,飛行機グライダーのように機体に固定された翼を用いる固定翼機と,ヘリコプターやジャイロプレーンのように軸のまわりを回転する回転翼を用いる回転翼航空機に大別される。翼に生ずる揚力は速度の2乗に比例するので,速度が速くなれば,機体の比重が空気の比重よりはるかに大きくなっても飛ぶことができる。…

※「ヘリコプター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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