シコルスキー(英語表記)Sikorsky, Igor Ivan

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シコルスキー」の意味・わかりやすい解説

シコルスキー
Sikorsky, Igor Ivan

[生]1889.5.25. キエフ
[没]1972.10.26. コネティカット,イーストン
ロシア生まれのアメリカ合衆国の航空技術者,ヘリコプタ開発者。ペテルブルグ海軍兵学校を卒業し軍人となったが,1906年除隊。パリで工学を学んだのちキエフ工科大学入学。卒業後ヨーロッパを旅行し,ライト兄弟の業績に接して,ヘリコプタ着想を得た。第1次世界大戦末までロシアでヘリコプタや飛行機の設計製作従事。ロシア革命後の 1919年アメリカに渡り,旅客輸送を主目的とする超大型飛行艇の製作を始めた。そのなかには,数々の世界記録をつくったクリッパー・シリーズ (S-40,42,44など) がある。 1930年代末頃からは,若いときに手がけたヘリコプタの開発に戻り,1939年の VS-300を皮切りに,ヘリコプタの実用化に力を尽くした。今日のヘリコプタに使用されている基本的な機構はほとんど 1931年に得た特許と初期の開発研究に含まれている。第2次世界大戦後も,次々と新しいヘリコプタを世に送り,実用航空機としての地歩を確立するのに大きく貢献した。ロシアの聖ウラジーミル十字勲章など,多くの栄誉を受けている。 2001年には「ヘリコプタの殿堂」入りをした。 (→シコルスキー VS-300 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シコルスキー」の意味・わかりやすい解説

シコルスキー
しこるすきー
Igor Sikorsky
(1889―1972)

アメリカの航空技術者、発明家。ロシアのキエフ(現、ウクライナキーウ)に生まれる。帝政ロシア時代の1913年に世界最初の四発大型機を設計製作した。革命後の1919年にアメリカに移住し、シコルスキー航空技術社(のちにユナイテッド航空機会社、さらにユナイテッド・テクノロジー社に吸収)をおこし、飛行機や飛行艇の製作に従事した。

 1939年からヘリコプターの設計にかかり、1941年から1942年にかけて現在のヘリコプターの形式を完成させた。これによりレオナルド・ダ・ビンチスケッチに始まるヘリコプターは実用航空機として実現した。その垂直に離着陸し空中に停止することも可能な特性を生かして、輸送救難戦時の前線支援などに使われるようになった。なお、世界で最初のヘリコプターは、1936年のドイツのフォッケ・アッハリゲス機である。

[佐貫亦男]

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百科事典マイペディア 「シコルスキー」の意味・わかりやすい解説

シコルスキー

米国の航空技術者。ロシア生れ。1913年世界最初の4発飛行機を製作,のち米国に移住,帰化。航空機製作会社を設立,大型飛行艇の製作で名をあげた。第2次大戦中,実用的なヘリコプターVS300を完成,ヘリコプター発展の基礎を築いた。

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世界大百科事典(旧版)内のシコルスキーの言及

【ユナイテッド・テクノロジーズ[会社]】より

…75年現社名となる。主力のPratt & Whitneyグループでは,ボーイング747やDC10,F16戦闘機などの航空機用のエンジンおよび交換部品,液体および固体燃料用ロケット・ブースターなどを生産するほか,全米第1位のエレベーター・メーカー,オーチス社Otis Elevator Co.,ヘリコプター製造のシコルスキー社Sikorsky Aircraft,電動ギアのNorden,全米第1位のエアコン・メーカー,キャリア社Carrier,ワイヤ・ケーブルのEssex,船舶用レーダーのDynel Electronics,半導体のMostek,ディーゼルエンジンのAmbac,商業ビル用にコンピューターによるエネルギー管理と通信システムを提供するBuilding Systemsなどが傘下にある。売上構成はプラット・アンド・ホイットニー社27%,キャリア社23%,オーチス社22%のほか航空システム15%,自動車部品13%(1994)。…

※「シコルスキー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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