緊急に目標を占領するため,地上戦闘部隊が航空部隊により迅速に空中機動する作戦。たとえば追撃戦,上陸・渡河作戦,山地戦など地上移動の困難な場合に使われる。空挺作戦とヘリボーン作戦を合わせて空中機動作戦と総称するが,一般にはこれを空挺作戦と呼ぶ。空挺作戦は,特別に編成,訓練された部隊が,航空部隊と協力して相当の重装備を携行し,長距離を迅速に移動し,敵地にパラシュート降下あるいは強行着陸して,目標地域内の要点を確保する。この陣地を空挺堡という。この目標は,通常敵の側背に選定されるので,敵に与える脅威は大きい。空挺部隊は空挺堡の確保中,空中から兵器,弾薬,食糧の補給を受け,ついで地上部隊の進攻に連係して地上戦闘を開始するのが通常である。ヘリボーン作戦は,一般の戦闘部隊が戦線の後方でヘリコプターに搭乗し,軽易に空中を移動して戦場の要点,軍事施設を占領したり,重要正面への兵力増強,敵の側背奇襲などを行う。空挺作戦は戦略目的によって実施される場合が多いのに対し,ヘリボーン作戦は規模が小さく,戦術目的により実施される。空中機動作戦は,飛行機,兵器,戦法の進歩に伴い急速に発達してきた。第1次世界大戦で飛行機が実戦に使用されたのち,各国は輸送機の開発による兵員,軍用装備品の輸送,パラシュート降下,グライダーによる着陸の研究を進めてきたが,1939年,ソ連はフィンランドとの戦いで初めてこれを実戦に適用した。第2次世界大戦の前半には日独側が,後半には英米側が積極的大規模な空挺作戦を実施した。朝鮮戦争でアメリカ軍がヘリコプターを多目的に使用してその進歩を促し,ベトナム戦争ではヘリボーン作戦を頻繁に行った。空中機動作戦は独立した作戦ではないので,全般作戦計画に基づき準備を周到にすること,空輸の間は戦闘力が発揮できないので,航空優勢の獲得,奇襲性の発揮が必要である。
執筆者:森松 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
陸上作戦の一つで、航空機を使って目標地域に戦闘部隊を投入するとともに、補給支援を行う強襲作戦。輸送機やグライダーを使って直接着陸する方法と、パラシュートによる降・投下による方法がある。またヘリコプターを使うものは、ヘリボーン作戦とよばれて、区別されている。航空機からの落下傘降下による兵力投入の研究は、第一次世界大戦後に各国で開始され、第二次大戦では日本軍によるパレンバン、ドイツ軍によるオランダ侵攻、アメリカ軍によるシチリア島などで実際に使用された。またノルマンディー上陸作戦においても、グライダーや落下傘による大規模な空挺作戦が繰り広げられた。
空挺作戦は、部隊の移動時間を大幅に短縮できるとともに、短時間で大規模な部隊を戦場に送り込むことができるという利点がある。反面、重装備などの同時投下がむずかしく、時期や場所の選定、補給計画がしっかりしていないと、送り込んだ部隊が孤立してしまう。
空挺作戦の基本的な戦法には、早期提携作戦、襲撃作戦、地域阻止作戦、独立作戦、特殊作戦がある。早期提携作戦とは、速やかに味方地上部隊と提携させ、地上部隊の行動を支援する。襲撃作戦は、個別に特定した目標を短時間で撃破する。地域阻止作戦は、降下地点で比較的長時間、敵の戦闘行動を封じる作戦行動。独立作戦は空挺補の確保、特殊作戦は情報の収集や民衆の扇動、人員の救出などを行うものである。
[青木謙知]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一般に軍隊は陸軍,海軍,空軍の3軍で構成されており,通常,空軍は航空機,ミサイルをおもな武器とし,主として空中,宇宙空間を活動の舞台としている。またアメリカの戦闘空軍,太平洋空軍,第5空軍などのように,上記空軍の編制上の部隊単位名としても使用される。なおair forceは陸・海・空軍の全航空部隊を総称する言葉としても使用される。
【沿革】
近代軍は陸軍に始まり,次いで海軍が生まれた。1903年アメリカのライト兄弟による動力飛行機の初飛行以降,世界の列強は航空機の軍用化につとめ,第1次世界大戦で軍用機は陸・海軍に所属し,開戦当初は偵察を主としたが,やがて空中戦闘,爆撃などに使用され注目を浴びた。…
※「空挺作戦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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