ベンジル(その他表記)benzil

デジタル大辞泉 「ベンジル」の意味・読み・例文・類語

ベンジル(benzil)

ベンゾイン酸化して得られる芳香族有機化合物α-ジケトンの一つ。黄色の柱状結晶で、エタノールエーテルに溶けるが、水には溶けない。化学式C6H5COCOC6H5 ジベンゾイルビベンゾイルジフェニルグリオキサール
[補説]アルキル基の一つであるベンジル基ベンジルアルコールなどベンジル基を含む化合物のベンジルは英語benzylと表記され、このベンジル(benzil)とは分子構造が異なる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ベンジル」の意味・わかりやすい解説

ベンジル
benzil


α-ジケトンの一種。ジフェニルエタンジオン慣用名。ジベンゾイルともよばれる。融点95~96℃,沸点346~348℃。黄色結晶。水には不溶であるが,ほとんどの有機溶媒に可溶。ベンゾイン硝酸などで酸化して合成する。還元すればデオキシベンゾインとなる。水またはエチルアルコール中で,強アルカリの作用によりベンジル酸転位が起こり,ベンジル酸になる。

 反応性に富むカルボニル基を分子内に二つもつため,複素環化合物の合成に頻繁に利用される。ベンジルのジオキシムには,α(融点249℃),β(融点214℃),γ(融点170℃)の3種の立体異性体が存在する。

 なお,トルエンの側鎖メチル基から水素原子1個を除いた1価の置換基をベンジルbenzylという。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンジル」の意味・わかりやすい解説

ベンジル
べんじる
benzil

α(アルファ)-ジケトンの一つ。ジベンゾイル、ビベンゾイル、ジフェニルグリオキサールなどの別名をもつ。

 ベンゾインの酸化により得られる。化学式C6H5COCOC6H5。黄色柱状結晶で、水には溶けないが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルに溶ける。エタノールに水酸化カリウムを溶かした溶液(エタノールカリとよばれる)と加熱すると、転位反応によりベンジル酸になる。この反応をベンジル酸転位という()。

 なお基名のベンジルbenzylは、トルエンのメチル基の水素1個を除いたC6H5CH2-の名称である。

[廣田 穰 2016年2月17日]



ベンジル(データノート)
べんじるでーたのーと

ベンジル

 分子式 C14H10O2
 分子量 210.2
 融点  95~96℃
 沸点  346~348℃
 密度  1.23g/cm3

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化学辞典 第2版 「ベンジル」の解説

ベンジル
ベンジル
benzil, benzyl

】benzil.diphenylethanedione.C14H10O2(210.23).ビベンゾイルともいう.ベンゾインの酸化(硝酸酸化または硫酸銅のピリジン溶液で空気酸化)により生成される.黄色の柱状晶(エタノールから再結晶).融点95 ℃,沸点346~348 ℃,188 ℃(1.6 kPa).水に不溶,エタノール,エーテル,ベンゼンに可溶.還元するとデオキシベンゾインになる.アルコールカリを加えて温めると転位が起こってベンジル酸になる(ベンジル酸転位).ベンジルのジオキシムには,α(融点237 ℃),β(融点206 ℃),γ(融点166 ℃)の3種類の異性体がある.光重合開始剤,印刷インキ,有機合成原料に用いられる.[CAS 134-81-6]【】benzyl.トルエンの側鎖メチル基から,H原子1個を除いて得られるフェニルメチル基C6H5CH2-の名称.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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