ボエジャー(その他表記)Voyager

改訂新版 世界大百科事典 「ボエジャー」の意味・わかりやすい解説

ボエジャー
Voyager

探査機を木星土星天王星および海王星近傍を通過させ,これらの惑星とそのまわりの衛星や環の写真撮影,観測を目的としたNASAナサ)による惑星探査計画。ボエジャーは用いられた探査機の名称。1号と2号があり,重量はいずれも815kg。木星への軌道の関係から打上げは2号が先で,1977年8月,1号は77年9月。1号は79年3月5日木星から約28万kmの距離まで接近,その前後数ヵ月にわたり,木星および衛星イオユーロパ,ガニメデ,カリスト,アマルテアの写真を電送し,木星大気,大赤斑の性質や運動,衛星表面の詳細を明らかにした。またイオに活火山があること,木星にも環があることを発見した。1号はその後80年11月12日,土星の南極から約12万4000km下を通過,土星本体,ミマス,エンケラドス,ディオーネ,テチス,レア,チタンなどの衛星および土星をとりまく環を観測,写真とデータを電送した。その結果,土星の環は1000本以上の細い環からなること,F環の外側に新たにG環があること,F環は2本の環がからみ合った形をしていること,B環に自転車のスポークのような模様のあること,チタンの大気が大部分窒素であることなどが明らかにされ,新たに6個の衛星が発見された。1号は恒星間空間に向け太陽系を脱出する軌道を飛行中である。2号は79年7月,木星から64万3000kmを通過,81年8月,土星から約11万kmまで接近し,1号と同様の観測を行った後,天王星および海王星に向かった。なお,ボエジャーには異星人にあてた地球からのメッセージをおさめた金張りのレコードが搭載されている。
惑星
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ボエジャー」の意味・わかりやすい解説

ボエジャー

ボイジャー〉とも。米国のNASA(ナサ)による惑星探査計画に用いられた無人探査機。木星,土星,天王星,海王星の近傍を通過して,惑星や衛星,環の写真撮影と観測を目的としたもの。1977年8月まず2号機を,同年9月1号機を打ち上げ,1979年3月1号機,同年7月2号機が木星に最接近,ついで1980年11月1号機,1981年8月2号機が土星に最接近し,それぞれ木星,土星の表面状態や衛星を探査した。2号機は1986年天王星を探査,1989年8月海王星に最接近,海王星とその衛星トリトンの観測データを送信し,12年間で約60億9000万kmに及ぶ観測飛行を果たした。ボエジャー型の人工惑星は複数の惑星の引力を利用して軌道を変更するスイングバイという方法を用いており,最終的には太陽系を離脱するエネルギーを得て銀河系へと飛行する。
→関連項目熱電発電惑星探査機

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のボエジャーの言及

【イオ】より

…半径は1816km,質量は8.920×1025g(木星の4.6967×10-5倍)で,平均密度は3.56g/cm3と求められる。木星の電波(デカメートル波)バーストの起こる頻度がイオの位置と関係していることで以前から話題の多い衛星であったが,1979年3月と7月の惑星探査機ボエジャー1,2号の観測によってその正体がはっきりした。ボエジャー1号はイオの硫黄に覆われた赤い姿を写し出し,同時に火山の噴火をとらえることに成功した。…

【宇宙開発】より

…この空間の惑星の探査に関しては,アメリカの独壇場である。すなわち,木星,土星,天王星,海王星などの太陽系の外惑星の探査にはこれまでパイオニア10号と11号が先鞭をつけ,続いてより本格的なボエジャー1,2号が送られた。ボエジャーは,木星と土星の写真撮影と観測を行うとともに,フライバイすることによって加速し,より大きな速度を得てさらに天王星と海王星を目ざし,最終的に太陽系を脱出することになっている。…

【土星】より

…美しい環をもつことで有名である。1979年9月1日,惑星探査器パイオニア11号が表面から2万1400kmまで接近したのをはじめとして,80年11月と81年8月にはボエジャー1,2号がそれぞれ12万4000kmと10万0800kmまで接近してテレビ撮影など詳しい観測を行った。 表面は木星と同様な縞模様が見られるが,表面重力が弱いのと太陽から遠く低温のため,木星より大気活動が弱く,渦や斑点も少なく模様は淡い。…

【惑星】より

… 一方,さまざまな相違点のあることもしだいに判明してきた。ボエジャーの観測によると,雲上での風速は木星の場合毎秒100m程度なのに,土星の場合には毎秒500mに達している。これは土星の場合には質量の小さいのに対応して中心のコアが小さく,マントル相当部分が広いので,大きな循環胞が形成しやすく,大規模な流れができるためではないかと推論されている。…

※「ボエジャー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android