ボイジャー(英語表記)Voyager

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボイジャー」の意味・わかりやすい解説

ボイジャー
Voyager

宇宙空間探査において,アメリカ合衆国が打ち上げた2機の無人惑星探査機太陽系の巨大外惑星を調査して情報を地球に送るとともに,太陽の影響範囲の最遠部を探ることを目的としている。
1977年8月 20日ボイジャー2号がまず打ち上げられ,ボイジャー1号は約2週間後の9月5日に打ち上げられた。この2機の探査機を使った計画は燃料をあまり使用することなく,かつ短時間のうちに多くの惑星 (木星土星天王星海王星 ) に接近できるという,めったにない惑星軌道の位置関係 (惑星直列 ) を利用したものであった。惑星のこの特別な位置関係により,各探査機は特別な軌道をとることで,惑星の重力場を利用して加速し,方向を変えて次の惑星を目指すようになっていた (→グランドツアー ) 。このスリングショットといわれる重力利用の技術により,ボイジャー1号は,1979年3月5日に木星近傍を飛行したあと,土星に向かい,1980年 11月 12日に土星に到達した。その後,太陽系から脱出する軌道をとった。一方,ボイジャー2号は長い軌道をとってゆっくりと飛行し,1979年7月9日に木星に最接近,1981年8月 25日に土星近傍を通過した。 1986年1月 24日に天王星,1989年8月 25日に海王星に接近し,恒星間空間へ飛び立った。ボイジャー2号は天王星と海王星に接近した唯一の探査機である。
ボイジャーに搭載されたカメラ,磁場測定器などの機器で取得されたデータや画像から,それまでに知られていなかった巨大惑星とその衛星の詳細が明らかになった。探査機からの接近写真によって,木星の複雑な雲の構造,風や嵐の様子がわかり,衛星イオの火山活動が見出された。土星の輪には,不思議な組紐状構造や折れ曲がり,スポーク構造があり,無数の「微細な輪」を伴っていることが見出された。天王星に関して,ボイジャー2号は惑星のまわりに強い磁場と 10個の衛星を発見した。海王星については3本の輪と6個の衛星,および磁場と広がった複雑なオーロラを見出した。
1998年2月 17日ボイジャー1号はパイオニア 10号 (1972打ち上げ) よりも遠くまで到達し,人工物としては宇宙空間の最遠地点にいたった。 2004年までに2機のボイジャー探査機は冥王星軌道を越えたところを飛行している。それらの探査機は,21世紀になっても 10~20年は機器が稼働し続け,太陽磁場と太陽風の到達限界に関するデータを送ってくると予想されている。各探査機は,これらの探査機に出合う可能性のある地球外の知的生命へのメッセージを搭載している。金メッキされた銅製レコード (カートリッジ,針,その操作の手引きを図示したものを付属させている) には,地球上の生命文化多様性を表す図と音が記録されている。

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