改訂新版 世界大百科事典 「ポンカン」の意味・わかりやすい解説
ポンカン
ponkan
Citrus reticulata Blanco
かんきつ類マンダリンの1種。台湾では椪柑と書き果梗部が突出するので凸柑とも書く。フィリピンでバタンガスbatangas,インドでスンタラsuntaraなど異名が多く,品種も多く分化している。果実が扁球形で小さい低檣(ていしよう)系と,球形で大果の高檣系に品種は大別され,少しずつ特性が異なる。木は直立するが叢生(そうせい)状。葉は小さく,枝葉は密生する。白色5弁花が5月に咲く。果実は150~200g。果皮は薄く黄橙色。果肉はウンシュウミカンより硬い。遅採りすると,す上がりする。冷涼地では果実の肥大が劣る。種子は数個で少ない。胚は緑色で多胚。インド東北部の原産。インド,ネパール,中国南部,台湾,日本,インドネシア,フィリピンなどアジア諸国の温暖な地域でおもに栽培される。中国へは唐時代に伝播(でんぱ)。台湾へは1796年に導入されて,現在ではかんきつ類の主要品種になっている。日本には1896年台湾より導入され,鹿児島,愛媛,高知,熊本県などの温暖地でおもに栽培される。近年,早生種の森田,太田系が発見され,生産量も伸びている。もっぱら生食用だが,一部ウンシュウミカン果汁の風味改善用に搾汁される。むきやすく,酸味が少なく食べやすいうえ,甘い香りがあり,生食用として優良である。寒害,す上がりを回避するため12月に採取され,早生種は年末から,中・晩生種は2~3月に出荷される。晩生種は2月まで樹上におくと風味が向上する。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報