マヌルネコ(英語表記)Pallas's cat
Felis manul

改訂新版 世界大百科事典 「マヌルネコ」の意味・わかりやすい解説

マヌルネコ
Pallas's cat
Felis manul

体毛が長く美しい野生ネコ。食肉目ネコ科の哺乳類。トルクメン,イランからカシミールチベット,中国西部,モンゴルシベリア南東部に分布。体長50~65cm,尾長21~31cm,体重2.5~3.5kg。体はがんじょうで四肢が太く短い。耳は短く丸く,頭部の側方につく。上あごの前臼歯(ぜんきゆうし)はふつうのネコ類よりも1対少なく,歯は28本しかない。体色は変化に富むが,多くは背面は黄灰色または赤褐色を帯びた灰色,頰には2本の暗色線があり,その間は白色,後半身には赤褐色または黒色の細い横帯があり,腹面は灰色。尾には暗色の細い輪状斑があり,先端は黒い。岩石の多い砂漠平原川原山地森林に単独ですむ。夜行性でナキウサギノネズミなどの小型哺乳類,ジリスユキウサギ鳥類などを食べる。岩穴,岩の割れ目,他の動物が捨てた穴などを巣とする。繁殖習性などほとんど知られず,シベリアでは4~5月に1産4~6子を生むといわれる。寿命は飼育下で8年以上。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マヌルネコ」の意味・わかりやすい解説

マヌルネコ
まぬるねこ
manul
Pallas' cat
[学] Otocolobus manul

哺乳(ほにゅう)綱食肉目ネコ科の動物。シベリア、モンゴル、チベットの高地に分布し、乾燥したステップや砂漠などに生息する。体長52~62センチメートル、尾長21~30センチメートル。体毛は長く密で、寒冷な気候に耐える。体は黄灰色ないし黄褐色を帯びた黄色。岩の多い平原などでネズミ類、ナキウサギ、ライチョウなどをとらえる。飼育下で5月中旬に1腹5子を産んだ記録がある。

[今泉忠明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マヌルネコ」の意味・わかりやすい解説

マヌルネコ
Otocolobus manul; Pallas's cat

食肉目ネコ科。体長 45~60cm,尾長 23~30cmで,イエネコよりやや大きい。毛はやや長毛で灰黄色。背の後方に数本の褐色の横線と,頬に黒色の縞がある。耳の先端は丸く,顔の両側の毛は著しく長い。前臼歯は上下とも2対ある。夜行性。ハタネズミ,ハツカネズミなどの小さな齧歯類,ナキウサギなどの小型哺乳類などを捕食する。シベリア南部,モンゴル,カシミールに分布し,森林や草原などに生息する。

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