ユキウサギ(その他表記)blue hare
mountain hare
Lepus timidus

改訂新版 世界大百科事典 「ユキウサギ」の意味・わかりやすい解説

ユキウサギ (雪兎)
blue hare
mountain hare
Lepus timidus

ウサギ目ウサギ科の哺乳類。スカンジナビアから東シベリアまでのユーラシアツンドラと北部針葉樹林帯およびヨーロッパの山岳地帯に広く分布する野生ウサギ類の1種。日本には亜種のエゾユキウサギL.t.ainu北海道にすむ。本州などにすむノウサギによく似るがそれよりも大きく,四肢ともに長い。とくに後足が大きく16cm前後あり,雪の上を走るのに適する。体長46~55cm,尾長4~8cm,体重2.7~3.6kg。体色は夏毛では灰色を帯びた茶色で,冬毛はこげ茶色の耳の先端をのぞいて全身白色になる。森林のほか林縁部や畑地などに単独ですみ,植物の芽,葉,樹皮などを食べる。ノウサギ同様特別の巣をつくらず,毛のはえそろったよく発達した子を年にふつう3回,ときに4回生む。1産2~3子。繁殖期には1頭の雌を数頭の雄が追う姿がしばしば見られる。おもな天敵キツネヤマネコなど。よく似た近縁の種に北アメリカの北部に分布するカンジキウサギL.americanus(英名snowshoe hare)がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユキウサギ」の意味・わかりやすい解説

ユキウサギ
ゆきうさぎ / 雪兎
arctic hare
[学] Lepus timidus

哺乳(ほにゅう)綱ウサギ目ウサギ科の動物。ユーラシア大陸北部に分布し、日本では北海道に1亜種エゾユキウサギ(一名エゾノウサギ)が生息する。頭胴長50~58センチメートル、尾長4.8~7.5センチメートル。夏毛は褐色であるが、冬には耳の先の黒色部を除き白化する。本州以南のノウサギより大形で尾が長い。歯式は

で合計28本。低地から高山までの草原から森林にすみ、地上性で地中の穴は掘らない。冬も通常は雪上で眠るが、ときに深さ2メートルに達する雪穴を掘ることがある。夜行性で、草本類、木の芽・枝・皮などを食べ、カラマツカバなどの植林木やリンゴなどの果樹に大害を与えることがある。不規則であるが数年おきに生息数の増減がみられる。妊娠期間約50日ののち1~3子を産む。新生子は毛が生えそろい開眼している。天敵はワシ、タカ類、キツネなどである。

[阿部 永]

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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「ユキウサギ」の解説

ユキウサギ
学名:Lepus timidus

種名 / ユキウサギ
科名 / ウサギ科
日本にいる動物 / ◎
解説 / 後ろ足が大きいので、雪にもぐらず走れます。単独で生活します。
体長 / 50~58cm/尾長5~8cm/耳長7~8cm
体重 / 2~4kg
食物 / 植物の葉と若芽、小枝
分布 / ユーラシア北部の森林、農耕地、草原。亜種エゾユキウサギは北海道に分布

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユキウサギ」の意味・わかりやすい解説

ユキウサギ

「エゾユキウサギ」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のユキウサギの言及

【ノウサギ(野兎)】より

…本州,四国,九州の平地から高山にすむ野生のウサギ(イラスト)。エチゴウサギ,ヤマウサギ,ニホンウサギともいう。体型は家畜のカイウサギに似るが,前肢が長く,耳は短い。後足が長さ15cmと大きく,これをかんじきのように使って,柔らかな雪の上を敏しょうに走ることができる。体色は,夏毛では灰褐色ないし暗褐色,冬毛では褐色のものと黒色の耳の先端部をのぞいて全身白色になるものとがある。後者は,東北から北陸地方を中心に積雪の多い地方に見られる。…

【大発生】より

…哺乳類においても特異な生理・生態的変化をともなう場合のあることが知られているし,集団移動も頻繁に起こる。寒帯に住むレミング(タビネズミ)やユキウサギなどでは,前者は4年の,後者は10年の周期的大発生を繰り返し,これを食うアカギツネやオオヤマネコもそれにつれた周期的な密度変動を示すことが知られているが,温帯や熱帯に住む動物ではそうした周期的な大発生はほとんど見られない。 大発生の原因としては,えさをはじめとする生息条件の好転,天敵や競争種の欠如あるいは活動の低下などが考えられるが,多くの場合,そうした条件の発生は特別な気候条件の到来が契機となるとみられている。…

【ノウサギ(野兎)】より

… 近縁種が多く,同属の19種がアフリカ,ユーラシア,北アメリカに広く分布する。北海道にはよく似るがやや体の大きいユキウサギがすむ。ウサギ【今泉 吉晴】。…

※「ユキウサギ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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