ミスミソウ(読み)みすみそう

改訂新版 世界大百科事典 「ミスミソウ」の意味・わかりやすい解説

ミスミソウ (三角草)
liverleaf
Hepatica nobilis Schreb.var.japonica Nakai

落葉広葉樹林の下や縁に生えるキンポウゲ科多年草早春に開花するので,ユキワリソウ(雪割草)ともいう。匍匐(ほふく)する根茎がある。根生葉は越冬し,長い葉柄がある。葉身は三角形で浅く3裂し,裂片は先端がとがり,鋸歯はない。葉の表にはしばしば白っぽい斑紋がはいる。早春に高さ5~15cmの花茎を出し,先端に1個の花をつける。茎葉は3枚,輪生し,分裂せず,鋸歯はなく,先端が多少とがる。特に若いとき,葉や花茎には白い長毛がある。花は直径1~1.5cm,上向きに開く。萼片は6~10枚,花弁状で,白,淡青,淡紫,淡紅など色の変異が多い。花弁はない。茎葉輪が花のすぐ下にあるので,これが萼のように,萼片が花弁のようにみえる。おしべ,めしべともに多数。果実は数個の瘦果(そうか)の集りで,半ば茎葉輪に覆われる。花茎は花後に曲がり,果実は下を向く。本州,四国,九州北部の主として温帯に分布する。太平洋側には花の白いものが,日本海側には色のある花のものが多く,山草として珍重される。葉の裂片や茎葉の先端がまるいものをスハマソウ州浜草)f.variegata (Makino) Kitam.(英名liverleaf)という。いくつかの地域的な変種に分化しているが,種としては,ヨーロッパ東アジアに離れて分布している。和名三角草や州浜草は葉の形にもとづく。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミスミソウ」の意味・わかりやすい解説

ミスミソウ
みすみそう / 三角草
[学] Hepatica nobilis Schreb. var. japonica Nakai
Anemone hepatica L. var. japonica Ohwi

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の多年草。短い根茎があり多数の根を出し、葉は数枚で、冬も枯れずに残る。葉柄は長く約10センチメートル。葉身は約5センチメートル、質は厚く光沢があり、3裂して先端がとがり、このためミスミソウの名がある。同類で葉が円形のスハマソウ(洲浜草)と区別される。2~3月、葉が出る前に径1~2センチメートルの花を開く。花は1花茎に1個つき、花柄は長く、花弁はないが、花弁化した萼片(がくへん)が6~9枚ある。花色は白色のほか桃赤紫のぼかしなどがある。

 一般にはスハマソウとともにユキワリソウ(雪割草)の名で売られているが、真正のユキワリソウはサクラソウ科の多年草のことであり、この呼び名は正しくない。

[鳥居恒夫 2020年3月18日]

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百科事典マイペディア 「ミスミソウ」の意味・わかりやすい解説

ミスミソウ

ユキワリソウとも。キンポウゲ科の多年草。本州〜九州北部に分布し,山地の林内にはえる。葉は三角形,浅く3裂し,冬も枯れないで残る。春,長さ3〜10cmの花茎を立て径1cm内外の花を開く。葉や花茎に若い時には白い長毛が密生する。花弁はないが,花弁状で白色または淡紅色で長楕円形。萼片(がくへん)が6〜9枚ある。葉の裂片の先がとがるものをミスミソウ,とがらないのをスハマソウというが中間型もある。
→関連項目ユキワリソウ

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世界大百科事典(旧版)内のミスミソウの言及

【雪割草】より

…〈雪割草〉とは寒いときに雪を割って咲く花の意のため,早春に咲く植物,たとえばイチリンソウショウジョウバカマなどをさすこともあるが,サクラソウ科の多年草1種の和名ともなっている。またキンポウゲ科の山草のミスミソウの別称でもある。サクラソウ【堀田 満】。…

※「ミスミソウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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