改訂新版 世界大百科事典 「ミニステリアーレ」の意味・わかりやすい解説
ミニステリアーレ
Ministeriale[ドイツ]
家士(かし),家人(けにん)などと訳され,国王,諸侯などの家に属する非自由人でありながら,その職務上社会的影響力を得て特別な身分を形成した者をいい,ディーンストマンDienstmannとも呼ばれる。ラテン語ではミニステリアリスministerialis。すでにフランク時代に宮廷,行政,軍事勤務に従事するpueri regis,servi ministerialesなどと呼ばれた非自由人が存在していたが,11世紀以降になると,領主の他の隷属民と区別され,その権利義務を家人法Dienstrechtとして記録される特別な身分が形成されるようになり,軍事的・行政的な勤務に就いた。
彼らはその主人から生計費を,後には家人法に基づく采邑(さいゆう)を与えられて富裕となり,騎士的生活様式を取り入れつつ社会的声望を高めていった。12世紀になると窮乏化した貴族たちがその特権(参審人資格など)を留保して他の領主のミニステリアーレとなる事例(いわゆる留保ミニステリアーレ)も生じ,ミニステリアーレと自由騎士との境界が流動的となり,家人法上の采邑もレーン法上の封地と変わらなくなってゆく。ザリエル朝,シュタウフェン朝のドイツ国王は,不断にその権利を高めて独立化し,忠実な勤務を期待しえなくなった封臣の代わりに,ミニステリアーレを王権強化の支柱とする政策を試みたが失敗に終わる。13世紀以降ミニステリアーレは貴族にかぞえられ,騎士層の中核部分を形成することとなるが,往時の不自由身分の標識を完全に払拭するのは14世紀になってからであった。ミニステリアーレ身分は,中世の法書ザクセンシュピーゲルでは第5番目,シュワーベンシュピーゲルでは第6番目のヘールシルトに置かれている。なお中世都市の指導層たる都市貴族Patriziat層の重要部分が都市領主のミニステリアーレに由来している事実が,近年再確認され注目されている。
執筆者:魚住 昌良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報