日本大百科全書(ニッポニカ) 「モスクワ宣言」の意味・わかりやすい解説
モスクワ宣言
もすくわせんげん
正式名称は「社会主義国の共産党・労働者党会議の宣言」。1957年11月、モスクワで開かれた十月社会主義革命40周年祝典に64か国の共産党・労働者党代表が参加したが、そのとき12の社会主義国の党代表者会議が、資本主義諸国の党代表と協議のうえ採択した国際共産主義運動の歴史的な文書の一つ。それは次の点を明らかにしている。〔1〕現代の主要な内容は資本主義から社会主義への移行であり、世界の発展は二つの対立する社会体制の競争の経過と結果によって決定される。〔2〕戦争か平和共存かという問題は世界政治の根本問題になっている。帝国主義が存続する限り侵略戦争の根源はなくならないが、平和勢力の強化によって、いまでは、戦争を防ぐ現実的な可能性がある。二つの体制の平和共存は社会主義諸国の対外政策の基礎である。〔3〕各国の党は、社会主義革命と社会主義建設の普遍の原則を、各国の具体的な歴史的条件に応じて創造的に適用しなければならない。その際、修正主義と教条主義を克服しなければならないが、現在の主要な危険は修正主義である。〔4〕資本主義から社会主義への移行形態は、国によって多様なものとなりうる。現在の条件のもとでは、一連の資本主義国で、労働者階級は労働者の統一戦線および人民戦線などを基礎に人民の大多数を結集し、平和的方法で社会主義革命を実現する可能性をもっている。
[佐藤信一]