軽量小型化するコンピュータと、携帯電話にみるような通信技術の高度化によって、移動中であってもコンピュータとそれにつながるネットワーク資源を利用しやすくなった。このような利用形態をモバイルコンピューティングという。使用される機器は、ノート型パソコン、電子手帳、モデム、有線電話、無線電話、無線LANカードなどである。これらの機器を使用し、電話回線や公衆無線LAN経由で特定のコンピュータ(サーバー)にアクセスすることにより、出先であっても、また、自動車や列車の車中のように移動中であっても、固定のサイト(自宅やオフィス)でできることと同じことができるようになる。携帯電話だけでこれが可能な機種もある。機器をヘッドセットにしたり、ゴーグル、衣服などに内蔵するなどのくふうが進みつつあり、これらはウエアラブルコンピューティングwearable computing(着装コンピュータ利用)とよばれる。さらに、外界のさまざまなものにもコンピュータを埋め込み、着装コンピュータとそれらとの相互作用を起こさせることにより、人間の活動を援助、強化することが考えられている。このように実環境の至るところにコンピュータを埋め込み、それによって人間の活動を支援することをユビキタスコンピューティングubiquitous computing(至るところコンピュータ利用)という。これはコンピュータによって現実を仮想的に提供するバーチャルリアリティvirtual realityとは逆の発想である。モバイルコンピューティング自体はどちらの方式にも進み得る技術である。
[田村浩一郎]
『MC&MD研究会編『モバイル・コンピューティング』(1996・日刊工業新聞社)』▽『マルチメディア通信研究会編『モバイル・コンピューティング教科書』(1999・アスキー)』
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(斎藤幾郎 ライター / 西田宗千佳 フリージャーナリスト / 2007年)
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