モーズレー(その他表記)Henry Maudslay

改訂新版 世界大百科事典 「モーズレー」の意味・わかりやすい解説

モーズレー
Henry Maudslay
生没年:1771-1831

イギリスの機械技術者。12歳でウールウィッチ兵器厰に入り,木工鉄工の仕事を覚え,次いで鍛冶職の徒弟となり熟練工となったが,7年の徒弟年季明け前,当時安全錠を発明製作していたJ.ブラマの工場に請われて入る。錠部品製作用の機械に習熟,職工長になるが,賃金問題から1798年に去り,独立して工場を開設,機械製作を始めた。最初の大きな仕事はM.I.ブルネルの注文で船舶用滑車を製作する機械をつくることであった。1805年キャラコの捺染法に関する特許,06年にはB.ドンキンとともに旋盤にも適用できる差動運動の特許を得たほか,07年には〈卓上動力機〉として知られた蒸気機関を製作,これは改良のうえ40年間にわたって小規模動力機関として普及した。12年にR.ディッキンソンとともに空気吹込みによる浄水法を発明したころにはモーズレー会社の名も広く知られた。24年にはJ.フィールドと提携,ボイラー内の塩凝固防止法の特許を得たほか,ボイラー用鉄板の押し抜機をはじめ各種舶用機関を改良した。彼の最大の仕事は旋盤の改良であり,1797年の全金属製の自動送り台付き旋盤はねじの切削以外に,ピストンやあらゆる種類の機械部品の加工を可能にし作業機としての工作機械の道を開き,他の作業機とともに産業革命の技術的基礎形成するものとなった。さらに彼はねじの標準化にもつとめ,1万分の1インチの精度の副尺付きカリパスも製作した。彼の工場からは,J.ホイットワースやJ.ネスミスら著名な機械技術者が輩出した。
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百科事典マイペディア 「モーズレー」の意味・わかりやすい解説

モーズレー

英国の技術者。初め鍛冶職の徒弟,のち自立して機械製作に当たる。1797年に作った送り台付旋盤により機械部品の精密加工に道を開き,産業革命の技術的基礎を形成,蒸気機関の改良にも業績がある。彼の工場からはホイットワースネスミスらの著名な機械技術者が輩出した。
→関連項目工作機械

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世界大百科事典(旧版)内のモーズレーの言及

【工作機械】より

…ウィルキンソンの中ぐり盤は,古い時代の工作機械の最後を飾ると同時に近代工作機械への胎動であった。 90年代にH.モーズレーにより作られた旋盤は,近代工作機械の始まりとされる。この旋盤は産業革命により実用化された蒸気動力を使い,それまで木製であった構造を鋼製に,また,工作機械の特徴である母性原則(後出〈工作機械の構造構成〉を参照)を考慮した構成となっていて,その形態は現在のものと大差がない。…

【ねじ】より

… このようにねじそのものは古くから使用されていたが,近代的なねじの製造法が確立されるのは18世紀以降のことである。まず,イギリスのH.モーズレーは1790年ころ,10年がかりで1本の精度の高いねじ(親ねじ)を作り,これを運動用ねじとして取りつけた旋盤により第2,第3の親ねじを精密に複製する技術を確立した。一方,従来困難であっためねじの製作は,モーズレーの工場で働いていたクレメントJoseph Clement(1769‐1844)が作ったタップの利用により,飛躍的に容易となった。…

※「モーズレー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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