ヨウ化物
ようかぶつ
iodide
ヨウ素を負一価成分として含む化合物の総称。金属のヨウ化物および少数の非金属のヨウ化物が知られており、そのほかにアルキルをはじめとする各種炭化水素のヨウ化物もある。
金属のヨウ化物は、一般に、金属水酸化物あるいは炭酸塩をヨウ化水素酸に溶かすか、適当な金属塩と可溶性ヨウ化物との複分解、あるいは金属とヨウ素との直接反応などによってつくられる。
たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属など陽性の強い金属のヨウ化物(LiI,NaI,KI,RbI,CsI,MgI2,CaI2,SrI2,BaI2)は一般に無色の結晶で、水に易溶。アルコール、アセトンなどの有機溶媒にも溶ける。これらの水溶液を酸性にすると、空気で酸化されてヨウ素を生じ、ヨウ化物イオンとの間でポリヨウ化物イオンをつくって褐色になる。遷移金属および重金属のヨウ化物は黄色などの色をもつものが多く、水に溶けないものが多い。たとえばCuI,AgI,HgI2,Hg2I2,TlI,PbI2などがそうである。非金属のヨウ化物にはHI,SI6,SeI4,CI4,NI3などがあり、これらは加水分解しやすく、一般に融点、沸点が低い。
また、ヨウ化メチルCH3I、ヨウ化アミルC5H11I、ヨウ化ビニルCH2=CHIなどもヨウ化物ということがある。
[中原勝儼]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ヨウ化物
ヨウかぶつ
iodide
ヨウ素を酸化数1の状態で含む化合物の総称。金属ヨウ化物が普通であるが,非金属ヨウ化物も少数ではあるが知られている。元素間の直接反応,金属水酸化物あるいは炭酸塩をヨウ化水素酸に溶かすなどの方法により製造される。陽性元素のヨウ化物は無色で,一般に水,アルコールに易溶。ヨウ素を溶かす作用があり,ポリヨウ化物をつくる。陽性の弱い金属のヨウ化物には着色したものが多い。銅 (I) ,銀,水銀 (I) ,水銀 (II) ,タリウム (I) ,鉛 (II) のヨウ化物は水に難溶である。一般にあまり安定ではなく,酸溶液中ではヨウ素が遊離し,液を黄色ないし褐色に染めることが多い。非金属のヨウ化物は一般に融点,沸点が低く,不安定である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ヨウ化物
ヨウカブツ
iodide
ヨウ素と,ヨウ素より陽性な元素または基との化合物の総称.金属ヨウ化物のほか,少数の非金属ヨウ化物も知られている.金属ヨウ化物は元素間の直接反応,金属の水酸化物とヨウ素との水中での加熱,金属水酸化物あるいは炭酸塩をヨウ化水素酸に溶解することにより得られる.陽性の強い元素のヨウ化物は,イオン結合性の結晶,電気陰性度が増加するにつれて共有結合性の結晶となる.陽性の強い金属のヨウ化物は,一般に無色で水に易溶.エタノール,アセトンなどの有機溶媒に溶けるものが多い.非金属のヨウ化物は,一般に融点,沸点が低く,塩化物,臭化物に比べて熱分解しやすい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のヨウ化物の言及
【ハロゲン化物】より
…フッ(弗)化物,塩化物,臭化物,ヨウ(沃)化物およびアスタチン化物の総称で,ハロゲン元素とそれよりも電気陰性度の小さい元素との化合物をさす。ハロゲン元素どうしの化合物はとくにハロゲン間化合物と呼ばれ,またハロゲン化物(ハロゲン間化合物を含む)とハロゲンとの付加物をポリハロゲン化物と呼ぶ。…
※「ヨウ化物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」