改訂新版 世界大百科事典 「ラッカセイ」の意味・わかりやすい解説
ラッカセイ (落花生)
peanut
groundnut
Arachis hypogaea L.
子実(豆)を食用,あるいは搾油原料とするために栽培されるマメ科の一年草。ナンキンマメ(南京豆)やジマメ(地豆)とも呼び,英名ピーナッツの名でも知られる。茎は基部から枝分れし,枝が立ちあがる立性と,横にはう匍匐(ほふく)性との2型に分けられる。葉は柄が長く,4枚の小葉が羽状につく。小葉は倒卵形か楕円形で,先が小さくとがる。葉のつけねに黄色の蝶形花が数個ずつ咲く。おもに自家受精し,開花後5日目ごろから花の基部(子房柄)が地面にむかって伸び,先端が地中にもぐりこんで莢(さや)として肥大し地中で結実する(〈落花生〉の名はこれにちなむ)。豆は,1莢に1~5粒はいるが,2粒のものが多い。原産地は南アメリカの中央,ボリビアの高地とされ,紀元前に南アメリカから中央アメリカの各地に伝播(でんぱ)した。16世紀にスペインから南ヨーロッパに伝わり,また,奴隷の食糧としたため,奴隷船によりギニアやセネガルなどに伝えられ,徐々にアフリカ東部にまで栽培が広まった。全世界で約2200万haに作付けされ,約2800万tの生産があり,マメ類ではダイズに次いで2番目の生産量をあげている。主生産国は中国,インド,アメリカなどである。日本では約8600haに作付けされ,収穫量は約2万t(2006)である。主産地は千葉,茨城などである。品種は豆粒の大きなバージニア型,豆粒の小さなスパニッシュ型,バレンシア型,サウスイースト・ランナー型の4型に区分される。日本では5月中旬ころに種をまく。7月上旬から8月上旬にかけて開花したものが稔実する。茎葉が老化し,葉の7~8割が落葉したころを目やすとして収穫する。掘り採ったものを乾燥し,莢をおとす。豆はタンパク質を25%以上,脂質を45%以上含み,栄養的にすぐれている。大粒品種は食味がよく,いり豆などとし,小粒品種はピーナッツバターや搾油原料とし製菓原料にも使われる。また未熟な豆を塩ゆでにして食べることもある。
執筆者:星川 清親
食用
落花生の日本伝来については,黒川道祐が《遠碧軒記》(1675)に〈近来渡る〉と書いているのが最も古い記録のようである。初めは長崎地方で栽培され,中国風の料理に用いられていたようで,《普茶料理抄》(1772)や《卓子式》(1784)には落花生を使った料理が記載されている。19世紀に入って紀伊でも栽培されるようになり,それまでは花,または花の露が落ちたところに実を結ぶものだなどといわれていたが,ようやく正確な知識も得られるようになった。しかし,なお他地方へは普及せず,栽培,食用が本格化したのは明治に入ってからであった。落花生はいってそのまま食べるほか,せんべい,おこし,あめなどの菓子にも利用される。料理としては,いったものをすって泥状にし,それを調味してあえ物に用い,あるいは,葛粉(くずこ)を加え,火にかけて練って落花生豆腐にしたりする。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報