翻訳|langur
霊長目オナガザル科コロブス亜科のうちのリーフモンキー属Presbytis,ドゥクモンキー属Pygathrixに属する旧世界ザルの総称。ほっそりとした優美な肢体と長い尾をもつのでヤセザル,食物がもっぱら葉であるところからリーフモンキーleaf-monkeyとも呼ばれる。インド亜大陸,スリランカおよび中国南部から東南アジアにかけて広く分布し,東南アジア方面の多くの種はルトンlutongとも呼ばれている。コロブス亜科中,原始的なタイプとされ,15種に分類されるが,外見上の地理的変異が非常に多く分類には不明の部分がまだ多い。ドゥクモンキー属は1属1種。リーフモンキー属の新生児はおとなと異なる体色をもち,このパターンによって4亜属に細分される。
おとなの背面は赤褐色,灰色,銀色,黒色など種と地域によりさまざまである。また,頭部に独特な形の毛をもつ種が多い。腹側は一様に青っぽい。頭胴長は45~80cm,尾長は55~105cm。体重は7~18kg。四肢は細長くてすばらしい跳躍力をもち,ハヌマンラングールは7~10mも跳ぶ。多くの種が熱帯多雨林の樹上生活者であるが,ハヌマンラングールのようにヒマラヤの山地林や乾燥した疎開林にすみ,地上もよく利用する種もいる。葉食に適した特殊化した胃をもつものの,木の葉ばかりでなく果実や花もよく食べ,ダスキールトンはカタツムリも食べるとの報告もある。一雄一雌で生活するメンタウェーラングールを除き,一般には15~40頭の単雄群で生活するが,少数の雄を含む複雄群を形成する場合もある。しかし,それらの群れ構成の決定因についてはまだ不明である。いずれの場合にもあぶれた雄は雄グループをつくる。単雄群の場合,リーダー交替は雄間の争いでなされ,交替後新リーダーは群れの赤ん坊を殺し,その結果子持ち雌の発情が促進されることが多くの種で観察されている。反面,安定した群れでは雄は子どもに対し寛容で,また雌は他の雌の新生児の子守りをよくする。遊動域は森林域で3.5~十数ha,乾燥地帯では8km2に及ぶこともある。インドのハヌマンラングールは神の使いとされたいせつにされている。
執筆者:黒田 末寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱霊長目オナガザル科コロブス亜科のうち、パキスタン以東のアジアに分布するラングール属に含まれる動物の総称。この属Presbytisのサルには14種があり、いずれも木の葉を主食として、体長50~70センチメートル、尾長50~100センチメートル、ほっそりとした体格をもち、ヤセザルともいわれる。
体毛の色は種ごとに違うが、赤ん坊の体色により4亜属に分けられる。赤ん坊が黒いものがラングール亜属、頬(ほお)が白く他が灰色または黒いものがカシ亜属、全身白いものがリーフモンキー亜属、オレンジ色のものがルトン亜属である。このうちラングール、カシの2亜属はインド亜大陸とスリランカに分布し、狭義にはこれらをラングールとよぶ。ラングール亜属のハヌマンラングールP. entellusはその全域、カシ亜属のニルギリラングールP. johniiはインド半島南端部、パープルフェーストラングールP. senexはスリランカにすむ。この3種はいずれも小型の単雄群をつくり、群れは1平方キロメートル程度の縄張り(テリトリー)をもつ。
[川中健二]
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