ラ・グーマ(英語表記)La Guma, Alex

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラ・グーマ」の意味・わかりやすい解説

ラ・グーマ
La Guma, Alex

[生]1925.2.20. 南アフリカ連邦ケープタウン
[没]1985.10.11. キューバ,ハバナ
南アフリカ共和国の小説家。ケープタウンの第6地区の生まれで,アパルトヘイト下の人種区分ではカラードに属する。ケープ工業カレッジ卒業。父は南アフリカ・カラード人民会議議長。1948年,南アフリカ共産党に入党。反アパルトヘイト闘争の指導者で,1955年の「自由の憲章起草に参加。1956年反逆罪で逮捕される。言論面では,1955年以降『ニュー・エイジ』紙で活躍,多数の短編を発表したが,自宅拘禁や投獄,言論禁止処分を受け,1966年イギリスに亡命アフリカ民族会議 ANCの重要メンバーで,1978年から ANCキューバ代表。アフリカ文学関係の国際会議やアジア=アフリカ作家会議でも議長を務めるなど積極的に活動した。代表作は,スラム街を舞台にカラード青年の憤怒を綴る『夜の彷徨』A Walk in the Night(1962),カラードのアイデンティティを問い団結を訴える『まして束ねし縄なれば』And a Threefold Cord(1964),獄中記『石の国』The Stone-Country(1967),反アパルトヘイト地下組織での人間群像を描く『季節の終わりの霧の中で』In the Fog of the Season's End(1972),バンツースタン建設計画とアフリカ人の抵抗を背景として差別怨念の深さを語る『もずが虫を串刺しにする時』Time of the Butcherbird(1979)。ほかに『ソビエト紀行』A Soviet Journey(1978)。1969年,アジア=アフリカ作家会議運動によりロータス賞を受賞。(→アフリカ文学南アフリカ文学

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラ・グーマ」の意味・わかりやすい解説

ラ・グーマ
らぐーま
Alex La Guma
(1925―1985)

南アフリカ共和国の小説家、アパルトヘイト反対運動の闘士。カラード。ANC(アフリカ民族会議)の指導者の子として生まれ、ケープ工業専門学校を卒業後、1948年に南アフリカ共産党に入党、ケープタウンを中心にアパルトヘイト反対闘争を指導。言論面でも1955年から1962年まで『ニュー・エイジ』紙を拠点に活発な論陣を張り、1955年の人民会議で採択された「自由の憲章」の起草に参加、のち反逆裁判に連座して何回か投獄と自宅拘禁を体験、1966年ロンドンに亡命した筋金入りの反骨精神旺盛(おうせい)な作家である。のちダルエス・サラーム大学などでも教え、1981年(昭和56)秋にアジア・アフリカ・ラテンアメリカ文化会議に参加のため来日。アジア・アフリカ作家会議議長、ANCのキューバ代表部主席代表を勤めていた際、1985年ハバナで心不全により客死。ついに故国に帰ることはなかった。「個人」よりも南アにおける人種差別の極限の「情況」を描く才は抜群で、1969年ロータス文学賞受賞。代表作『夜の彷徨(ほうこう)』(1962)のほか『そして三重織の紐(ひも)は』(1964)、獄中体験記録小説『石の国』(1967)、『季節の終りの霧の中で』(1972)、『モズが虫を串(くし)刺しにする時』(1979)などがある。

[土屋 哲]

『アレックス・ラ・グーマ著、玉田吉行訳『まして束ねし縄なれば』(1992・門土社総合出版)』

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百科事典マイペディア 「ラ・グーマ」の意味・わかりやすい解説

ラ・グーマ

南アフリカ共和国のケープ・タウン第6地区に生まれたカラード作家。若くしてアパルトヘイト反対運動に参加。1956年,国家反逆罪で逮捕,投獄された。1966年,自宅監禁中にロンドンへ亡命。第6地区の底辺群像を描く《夜の徘徊》(1962年),地下活動の人間模様を描く《季節の終わりの霧の中で》(1972年),民衆の決起を主題とした《百舌が虫を串刺しにする時》(1979年)など。

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