改訂新版 世界大百科事典 「リーシュマニア」の意味・わかりやすい解説
リーシュマニア
Leishmania
原生動物の一属で,トリパノソーマ科に属する寄生原虫。種々のリーシュマニア症をひき起こす。リーシュマニアはサシチョウバエのメスにより吸血を介して伝播される。ハエの体内で増殖したリーシュマニアは,ハエの吸血吻(ふん)に達し,吸血によって最終宿主体内に侵入する。ヒトおよび脊椎動物の体内では,リーシュマニアは直径2~4μmの球形ないし卵形をしており鞭毛をもたない。ハエの体内では,長さ10~20μmの細長い形をしており鞭毛を有する。リーシュマニアには,黒熱病(カラアザール)をひき起こすドノバニL.donovani,東洋腫をひき起こすトロピカL.tropicaなどが知られている。黒熱病では,サシチョウバエに刺された後,1ヵ月後くらいから脾臓が腫大し,皮膚に黒褐色の沈着が生じる。治療を行わないかぎり,1~2年の経過でほとんど死亡する。ヒトに病原性をもつリーシュマニアは何種類もあるが,分類にはまだ多くの不明点が残っている。
執筆者:川口 啓明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報