リーシュマニア症(読み)りーしゅまにあしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リーシュマニア症」の意味・わかりやすい解説

リーシュマニア症
りーしゅまにあしょう

リーシュマニア属Leishmania鞭毛(べんもう)虫が小形の吸血昆虫サシチョウバエによってヒトに媒介されておこる感染症の総称。従来、臨床症状をはじめ、分布や媒介昆虫の種類などにより分類されていたが、中南米で新種や亜種がかなり存在し、また同一種でも地域によって症状が異なる場合もあり、免疫学や生化学的手技を用いて再検討されるようになった。従来の代表的疾患は、ドノバンリーシュマニアL. donovaniによる内臓リーシュマニア症で、カラ・アザール(黒熱病)あるいはダムダム熱などともよばれる。

 このほか、皮膚リーシュマニア症ともよばれる東洋瘤腫(りゅうしゅ)があり、病原体は熱帯リーシュマニアL. tropicaで、顔面や四肢に無痛の丘疹(きゅうしん)ができ、中央部が潰瘍(かいよう)化した腫瘤となる。普通は瘢痕(はんこん)を残して自然治癒する。

 なお、リーシュマニア属は肉質鞭毛虫門動物性鞭毛虫綱キネトプラスト目トリパノソーマ科に属する原生動物(原虫)の代表的グループの一つで、アマスティゴートとプロマスティゴートの2種類の形態をもつ。アマスティゴートは従来リーシュマニア型(細胞寄生体)とよばれていたもので、直径1~3マイクロメートルの球形または卵形で、患者の脾臓(ひぞう)、肝臓リンパ節、骨髄中にみいだされる。プロマスティゴートは従来レプトモナス型(培養型)とよばれていたもので、中間宿主であるサシチョウバエの腸管内に認められ、幅2~6マイクロメートル、長さ10~25マイクロメートルの大きさで、短西洋ナシ形から長紡錘形に至る種々の形態と鞭毛をもつ。

[松本慶蔵]

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