日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルスカ」の意味・わかりやすい解説
ルスカ
るすか
Ernst August Friedrich Ruska
(1906―1988)
ドイツの物理学者。ハイデルベルクに生まれる。ミュンヘン工科大学、ついでベルリン工科大学で物理学および高電圧、真空技術を学び、1933年に博士号を取得した。1937年電機総合メーカーのジーメンス社に入社、1949年からはジーメンス社に所属したまま、ベルリン工科大学の講師、ベルリン自由大学の教授を務めた。1954年マックス・プランク協会に所属し、電子顕微鏡研究所長に就任(1957)、ジーメンス社は1955年に退社した。1959年からはベルリン工科大学の教授を兼任し、1972年に引退した。
1920年代なかばに、電子が波動性をもつことがわかり、さらにその電子波の波長は光波に比べて非常に短いことが示されると、光波のかわりに電子波を利用した高倍率の顕微鏡の開発が構想された。ルスカは、電磁コイルを電子レンズとして利用することを思いつき、1931年に最初の電子顕微鏡をつくりあげたが、その倍率は20倍であった。しかし1933年には倍率1万2000倍の顕微鏡を完成させた。この顕微鏡は、電子線が薄片試料を通りぬけた像を拡大するもので、透過型電子顕微鏡とよばれている。1986年に、電子顕微鏡を開発した功績によりノーベル物理学賞を受賞したが、走査型トンネル顕微鏡を開発したビーニッヒ、ローラーも同時に受賞した。
[編集部]