改訂新版 世界大百科事典 「レンジャー部隊」の意味・わかりやすい解説
レンジャー部隊 (レンジャーぶたい)
ranger
地形,気象を克服して敵の後方深く潜入し,主力から離れて独立的に遊撃戦を遂行する小人数の隠密行動部隊。レンジャー隊員は強靱な体力と堅固な意志力が必須条件で,地形の踏破,空中からの降下,潜水などの幅広い行動能力,射撃,格闘,爆破など高度の戦闘能力に加えて潜入,監視,偵察,破壊などの特殊技能にいたるまで教育訓練されており鍛えぬかれた戦士である。レンジャーの語源はそもそも山林監視人の俗称であって,アメリカ独立戦争時に自己の生存に必要とする物を背負って山地を行動する能力を買われて9個中隊のレンジャー隊が編成されたのが起源であるといわれる。アメリカ陸軍は第2次世界大戦においてもレンジャー隊として大隊規模の特別遊撃隊を編成しているし,朝鮮戦争時も19個中隊の空挺レンジャー隊を正式に編成し,敵中における遊撃戦に従事させた。日本では陸上自衛隊が1956年より富士学校において幹部レンジャーを養成してきており,この幹部レンジャーを基幹に各部隊でレンジャー隊員を練成し,必要に応じてレンジャー部隊が編成できるよう準備している。なお,レンジャーと類似の概念にコマンドがあり,日本では両者をふくめ特殊部隊と呼ぶこともあるが,後者は敵勢力圏内で奇襲行動を行う部隊をいう。
→コマンド作戦
執筆者:茅原 郁生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報