ロードプライシング(読み)ろーどぷらいしんぐ(英語表記)road pricing

翻訳|road pricing

デジタル大辞泉 「ロードプライシング」の意味・読み・例文・類語

ロード‐プライシング(road pricing)

都心部へ流入する車に料金を課す制度大都市交通渋滞解消対策の一つ。混雑税。通行課金道路課金

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共同通信ニュース用語解説 「ロードプライシング」の解説

ロードプライシング

特定の道路や地域、時間帯に課金したり、料金を変えたりすることで交通量を調整する政策。混雑緩和を目的に、英ロンドンシンガポールなどで一般道を有料化したケースがある。国内では住宅地域の大気汚染対策として、首都高速道路阪神高速道路迂回うかいして湾岸部を通行する大型車対象の割引実施されている。神奈川県鎌倉市は観光客の集中による渋滞を緩和するため、一般道を利用する車両への課金を検討している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロードプライシング」の意味・わかりやすい解説

ロードプライシング
ろーどぷらいしんぐ
road pricing

道路利用に対して一定の料金を課すことによって、道路混雑の緩和や環境負荷を低減させようとする政策。交通需要マネジメントTDM)のうちの一つ。基本的に道路の混雑抑制のみを目的とする混雑料金と同じように述べられることもあるが、環境負荷に関する課金の性質ももつために、厳密には混雑料金と同義ではない。

 モータリゼーションの進行によって、とくに都市内や都市周辺の道路では混雑が深刻な問題となっている。従来は道路の建設、拡充によって混雑を緩和、解消するという政策がとられてきた。しかし、財政的な制約や地理的な制約もあり、道路利用に対して課金を行うことで利用者に料金に対する抵抗感を与え、需要を抑制することによって混雑を解消、緩和しようとする世界的な動きがある。イギリスにおいては、すでに1960年代よりロードプライシングの政策提案がなされていた。

 経済学においては、社会的限界費用(交通量が1単位増加するときに社会全体が負担する費用の増加分)と私的限界費用(交通量が1単位増加するときに道路利用者個人が負担する費用の増加分)の乖離(かいり)部分を料金として道路利用者に課金すれば、社会的便益が最大になることが理論的に明らかにされている。しかし、実際には道路に対する課金は道路建設の資金調達のために実施されることもあり、ロードプライシングの目的は単純ではない。

 また、ロードプライシングは一般道路への課金を主体とするために、低所得者の道路利用を妨げるものであるというような問題点が指摘されている。ロードプライシングは国民生活に直接影響を与える問題であるために、コンセンサスを得ることがなかなかむずかしく、多くの国々で実施が求められながら過去に挫折(ざせつ)した事例は多い。

 最初にロードプライシングが導入されたのは、1975年のシンガポールであるとされている。また、ロンドンでは2003年よりロードプライシングが実施されている。そのほか、欧米で導入事例が多くみられる。東京でも2001年(平成13)ごろにロードプライシングの導入が真剣に議論されたことがあったが、実現には至っていない。

 日本のETC(ノンストップ自動料金収受システム)に近いシステムがロードプライシングの実施方法として想定されることが多いが、世界各国ではGPS(全地球測位システム)機能を利用したロードプライシングの実施が検討されている。

[竹内健蔵 2023年12月14日]

『根本敏則・今西芳一編著『道路課金と交通マネジメント 維持更新時代の戦略的イノベーション』(2017・成山堂書店)』『竹内健蔵著『交通経済学入門(新版)』(2018・有斐閣)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロードプライシング」の意味・わかりやすい解説

ロード・プライシング
road pricing

都心部など混雑地域へ乗り入れる車に通行料金や税を課す制度。交通渋滞の解消をはかり交通量を抑制しようというもので,特定の道路や車線を対象に課金する線的実施と,一定の区域を対象とする面的実施がある。1964年にイギリスの交通省委員会が発表したスミード・レポートで提唱された。1975年にシンガポールで世界で初めて導入され,その後ノルウェーの 3都市(オスロ,ベンゲル,トロンヘイム),2003年にはイギリスのロンドンで導入された。近年は,環境税の一つとしても考えられている。

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