ノルウェー西海岸にあるセル・トレンデラークSør-Trøndelag県の県都。トロンヘイムフィヨルドの南岸に発達する。オスロ、ベルゲンに次ぐ同国第三の都市で、人口15万1973(2002)。1300年ごろまでニダロスNidarosとよばれ、同国の首都であった。中部ノルウェーの農業地帯の中心地であり、後背地に産する銅や鉄の鉱石、パルプ、木材、そして魚などの積出し港でもある。
[竹内清文]
997年ごろ、オーラフ1世による建設とされるが、それ以前にトレンデラーク地方の大民会エイラシングが開催されている。ビーキング(バイキング)時代の政治、商業、宗教の中心地で、オーラフ2世の聖地として発展した。大司教座設立(1152)後、12、13世紀の内乱に諸王の本拠地となる。12世紀北欧最初の大聖堂であるニダロス大聖堂の建立が始まり、1300年ごろに中世ノルウェー教会文化の最盛期を迎える。アイスランド貿易の基地でもあったが、ベルゲンのハンザ商人に圧倒され、宗教改革で大司教エンゲルブレクツソンが去って、その教会中心地としての意味も失った(1537)。北方七年戦争(1563~70)でスウェーデンに占領される(1564)が、16世紀末には木材、鉱石輸出で発展。ロスキレ条約(1658)でふたたびスウェーデンが占領し、1681年大火で中世木造建築の大半が焼失した。科学協会(1760)やノルウェー銀行本部(1816)などが設立され、19世紀以降に船舶、鉄道網が拡充する。第二次世界大戦ではドイツとイギリスの戦場となった。
[荒川明久]
ノルウェー中部の南トレンデラーグ州の州都。人口14万4434(2004)。ノルウェー第3の都市で中部地方の中心。ニーダロス司教座がある。木材・鉱石の積出港,造船所や,木材,パルプ,機械,電子などの各種工業のほか,王立ノルウェー科学協会,工科大学,教育大学,ノルデンフィエルスケ工芸博物館,トロンヘイム・トレンデラーグ民俗博物館などの施設がある。交通の要衝で,国内各地とスウェーデンに向かう鉄道の分岐点。ノルウェー最古の都市の一つで,国王滞在地であった。古くはカウパング(〈交易地〉)の名で知られるが,10世紀末に現れたオーラブ1世の治下で発展し,11世紀以降は聖オーラブ王(オーラブ2世)の墓のために北欧各地から巡礼を集め,12世紀後半から1300年ころまでニーダロスNidarosの名でよばれた。ニーダロス司教座大聖堂(1152-1536)はノルウェー中世最大の建築で,14世紀初めに市の内外には10~12の教会と4~5の修道院があった。トロンヘイム湾上の島ムンクホルメンにはクリュニー派修道院(創立12世紀)の遺跡がある。その後ハンザ商人の活躍と宗教改革が原因となって衰退。17世紀に木材輸出によって通商が再び盛んになった。今日の整然とした町並みは,1681年の大火の後に行った都市計画による。
執筆者:菅原 邦城
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