環境税(読み)カンキョウゼイ(その他表記)environmental taxes

デジタル大辞泉 「環境税」の意味・読み・例文・類語

かんきょう‐ぜい〔クワンキヤウ‐〕【環境税】

環境に悪影響を及ぼす汚染物質排出を抑えるために課する諸種の税。温室効果ガスとなる二酸化炭素の排出量に応じて課税する、欧米諸国の炭素税など。
[補説]日本では平成24年(2012)10月地球温暖化対策税が導入された。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「環境税」の意味・わかりやすい解説

環境税
かんきょうぜい
environmental taxes

環境汚染物質の排出を削減するため、石炭石油天然ガス等の化石燃料消費に課する税のこと。環境汚染問題に対して直接的な規制手段ではなく、価格メカニズムを通して汚染防止を図る経済手段として用いられる。

 今日の世界的課題となっている地球温暖化防止の一手段として、環境税として二酸化炭素(CO2)排出に税をかける炭素税が検討・導入されるようになっている。化石燃料の消費に対して直接課税する炭素税は、排出権取引制度とともに、炭素に価格づけをして排出抑制を図る経済手法、「カーボンプライシング」の一つである。

 ヨーロッパでは、北欧諸国などで、すでに高額な炭素税を所得税減税と組み合わせて導入している国などもある。日本でも2050年までのカーボンニュートラルの実現を目ざして、炭素税も含むカーボンプライシングについて検討されるようになっている。ただし、税賦課(価格効果)でどの程度CO2の排出削減に寄与するかは予測がむずかしく、排出削減目標との整合性をとることが困難なこと、同時に環境税だけでCO2排出を削減・安定化させるには非常に高額な税が必要となり経済的負担が大きくなる可能性があること、1国のみで高額な環境税を導入した場合、産業国際競争力が低下する可能性があること、などの課題があり、日本でも本格的な環境税の導入についての議論はこれからという状況にある。

[小山 堅 2022年1月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「環境税」の意味・わかりやすい解説

環境税【かんきょうぜい】

環境保全を目的とし,環境に悪影響を与える物質の排出,消費を抑制する効果を期待し,またその税収によって環境の悪化を防止する対策をとるための税。既にスウェーデンオランダフィンランドなどは1990年から翌1991年にかけて,地球温暖化防止対策を進めるため石油や石炭など二酸化炭素(CO2)の排出源に対し炭素税を課し,二酸化炭素の排出抑制を狙っている。日本では,1992年に中央公害対策審議会(中央環境審議会の前身)が環境基本法制について環境庁に対し行った答申の中で,環境税・炭素税の導入に向けて本格的に議論するよう政府に求め,2003年に中央環境審議会が温暖化対策税制案を提言している。日本経団連も2002年に環境税導入を容認する方向に転換,2008年には道路特定財源の一般財源化にともないエネルギー課税と複合的に環境対策に使用するという考えを提示した。しかし日本税制改革協議会は環境税導入に批判的で,税制改革と差し迫った地球温暖化対策との両面から,議論を呼ぶ問題となっていたが2012年10月,二酸化炭素排出抑制を強化するため「地球温暖化対策のための税」が施行された。
→関連項目環境基本法

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「環境税」の意味・わかりやすい解説

環境税
かんきょうぜい
environmental tax

環境保全を目的として課される税。環境税のうち,地球温暖化防止を目的に,石油や石炭をはじめとする化石燃料に課する税を,炭素税 carbon taxと呼ぶ。課税によって化石燃料の消費量を減らし,温暖化の主要原因である二酸化炭素 CO2の排出を減らす一方,税収を温暖化対策などに充当し,環境保全の推進に役立てている国もある。1990年に導入したフィンランドをはじめ,スウェーデン,ノルウェー,デンマーク,オランダ,ドイツ,イタリア,イギリス,スイスなど,ヨーロッパ各国で実施されている。またカナダでは各自治体が導入している。日本では 2012年10月から CO2排出量に応じて石油,天然ガス,石炭に課税する「地球温暖化対策のための税」が導入された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵 「環境税」の解説

環境税

汚染物質の排出抑制など環境政策のための租税政策手段であると同時に、環境政策費用を原因者や受益者に負担させる財源調達目的を併せ持つ税。地球温暖化防止のために二酸化炭素排出削減を促すインセンティブ効果が期待される炭素税が、北欧を始め欧州諸国で1990年代に導入された。近年では、日本でも産業廃棄物税や森林環境税などの地方環境税が導入され、温暖化対策のための炭素税も検討されている。炭素税は実質的にエネルギー消費に対する課税になるので税収の規模が大きく、税収中立の立場からは環境税(この場合は炭素税)導入と引き換えに減税が求められる。欧州においては環境税の税収を雇用の改善を促す減税に活用することで、環境改善と雇用増大という二重の配当が得られるとの議論も盛んである。自然と人間の共生や環境保全を課税原則に取り入れ税体系を再構築することを、環境税制改革あるいは税制のグリーン化と呼ぶ。

(植田和弘 京都大学大学院教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「環境税」の解説

環境税

地球温暖化の主原因とされる二酸化炭素を発生する石油などの化石燃料に課す税金のこと。化石燃料に含まれる炭素量に応じて税額を決める。これにより、二酸化炭素の排出が少ない燃料への切り替えを促進するとともに、温暖化対策の財源を確保する狙いがある。「炭素税」「温暖化対策税」とも言う。先行する欧州では燃料の輸入や卸売り段階で課税し、その税収により社会保険料の引き下げなどを目指している。日本では環境省を中心に、導入に向けた準備が進められている。ただし、課税の重圧から海外への事業移転が加速し、産業の空洞化を招くおそれがあるなど経済成長へのマイナス影響も懸念されている。

出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android