カナダの政治家。フランス系カナダ人として初の首相(在職1896-1911)。ロワー・カナダに生まれるが,父親の英断で幼少のころイギリス系の家庭に下宿して英語の学校へ通い,完全に英仏両語を駆使するようになった。マッギル大学を卒業。学生時代にはコンフェデレーション(統合)に反対する急進派のルージュ党に属したが,その後法律事務所に勤め,あるいは雑誌の編集に携わって生計をたてるうちに思想的に穏健になっていったといわれる。1871年ケベック州下院議員に当選して政界に入り,74年には連邦下院議員となった。77年にA.マッケンジー自由党内閣に入閣したが,78年の総選挙で自由党は敗北を喫して野党となった。87年E.ブレークの後を継いで自由党党首となる。党首となって2度目の96年総選挙はマニトバ学制問題が争点であったが,ローリエは教育は州の権限に属するとして,マニトバ学校法への連邦政府の干渉を非とする立場をとり,自由党を勝利に導いた。
ローリエの時代のカナダは小麦ブームにわき西部に移民が殺到し,1905年にはサスカチェワンとアルバータの2州がカナダ連邦に加入,イギリス系とフランス系の対立も表面化せず,まさに彼の言葉どおり〈20世紀はカナダの世紀〉になるかのごとくであった。そのローリエが最も腐心したのは対外関係である。1899年のボーア戦争の際のカナダ兵派兵問題,1903年アメリカ合衆国とのアラスカ国境設定問題,09年の海軍創設問題の際の対英・対米交渉は,外交上の自治をイギリスから獲得しようとするカナダにとって不満足な結果に終わった。とくにカナダ独自の海軍創設は対英協力に熱心なイギリス系カナダ人と,イギリス帝国主義に反対するフランス系カナダ人双方の不満を買い,11年の総選挙における自由党敗北の主因となった。野党にあっても下院議員として,自由党党首として政界に影響力をもっていたローリエは,17年,第1次大戦中の徴兵制施行に反対し,自由党は分裂したが,大戦終了後,戦時中の連合内閣を支持した自由党員の多くは再び彼の下に糾合された。
執筆者:大原 祐子
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カナダの政治家。自由党に所属し、フランス系カナダ人としては初の首相(1896~1911)。マギル大学卒業後弁護士となり、1871年ケベック州下院議員に、引き続いて74年カナダ連邦下院議員に選出されて政界に入る。87年自由党党首となり、90年代カナダ政界を震駭(しんがい)させたマニトバ学制問題への巧みな対応により、96年より政権を担当した。ローリエの時代は、世界的な好況がカナダにも波及して未曽有(みぞう)の経済的繁栄を実現した。カナダ西部には世界各地から移民が到来し、1905年にはサスカチェワン、アルバータの二州の誕生をみている。英仏両語を完全に駆使した彼は、カナダの懸案である民族問題の操作に腐心したが、09年、イギリスからイギリス海軍への協力を求められた結果、カナダ独自の海軍を創設し、イギリス海軍への直接の協力を主張するイギリス系とカナダ海軍創設を帝国主義協力として反対するフランス系の票に敗れて下野した。その死まで自由党党首を務め、政界への影響力は大きかった。
[大原祐子]
1841~1919
カナダの政治家,自由党員。フランス系として最初のカナダ首相(在任1896~1911)。本国イギリスからの帝国主義に対抗し,同時に国内ではイギリス系とフランス系カナダ人との均衡にもとづく独自のカナダ・ナショナリズムを追求した。
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…こうしてコンフェデレーション後,一致して国家建設に向かったのもつかのま,カナダではリエル問題,マニトバ学制問題,ボーア戦争参戦問題,と絶えまない英仏抗争が展開されてゆく。 〈20世紀はカナダの世紀である〉と言ったのは世紀転換期に首相を務めたW.ローリエばかりではないが,ローリエ時代のカナダは日系カナダ人の問題などは生じたものの,安定した繁栄期を迎えた。寒冷・乾燥気候に適した小麦種の改良により,西部は世界の穀倉として注目されることになり,移民が続々と到来した。…
※「ローリエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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