ロー対ウェード裁判(読み)ローたいウェードさいばん(その他表記)Roe v. Wade

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロー対ウェード裁判」の意味・わかりやすい解説

ロー対ウェード裁判
ローたいウェードさいばん
Roe v. Wade

1973年,それまでアメリカ合衆国で違法とされていた妊娠中絶を女性の権利と認め,人工妊娠中絶を不当に規制する州法を違憲とする連邦最高裁判所の判決がくだされた裁判。人工妊娠中絶合法化の契機となった。1970年テキサス州の連邦地方裁判所で始まった人工妊娠中絶の是非をめぐる裁判で,原告のジェーン・ロー(仮名)は「女性は妊娠を終わらせるかどうかを決定する権利を有し,よって中絶の権利は女性の基本的な権利である」として中絶を禁止する州法は違憲であると主張。これに対してダラス地方検事ヘンリー・ウェードは「中絶を禁止することによって母体胎児の生命を保護することは州の義務であり,責任である」として中絶を禁止する州法を擁護した。連邦地方裁判所は「中絶のほとんどのケース(母体の生命保護を目的とする以外の中絶手術)を犯罪とするテキサス州法は,憲法で保障されている女性のプライバシーの権利を侵害している」として「中絶を著しく制限するテキサス州法は違憲である」との判決をくだした。1973年連邦最高裁判所もこの判決を支持。それまで人工妊娠中絶に対して厳しい法規制をしいていたアメリカにおいて,条件つきながらも人工妊娠中絶を初めて容認した画期的な判決であった。人工妊娠中絶は,その是非や中絶の条件がその後何度法廷で争われたが,国民意見一致にはいたらず,いわゆる「中絶論争」として中絶賛成派(プロチョイス)と反対派プロライフ)が論争を繰り広げている。

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