中国の本土と台湾は「不可分の領土」であり、台湾は「中華人民共和国」の一部と主張する中国の立場を指す。中国は台湾の問題を「核心的利益」と位置付け、各国に干渉しないよう求めてきた。日本は1972年の日中国交正常化に当たり、米国は79年の米中国交樹立に際して、それぞれ「一つの中国」の立場を尊重、支持し、台湾と断交している。
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中国政府の台湾問題に関する政治的主張の一つ。中国語で「一個中国」と表記する。「台湾は中国の不可分の領土であり、中国は一つしかない」ことを強調し、台湾の独立勢力などを牽制(けんせい)するものである。1949年、国共内戦に敗れた中国国民党を中心に構成する中華民国政府が台湾に逃れ、中国共産党は北京(ペキン)で中華人民共和国を成立させた。二つの政府はそれぞれ自身こそ中国唯一の正統政府と主張し、台湾海峡をはさんで軍事的に対峙(たいじ)する時代が1980年代まで続いた。北京の新政府は、旧政府(台湾の中華民国政府)との外交関係を断絶した国に限り国交を樹立するという外交方針を貫いた。台湾政府は1971年に国連から排除され、中国が国連における代表資格を認められて議席を獲得した。その後1972年(昭和47)に日本、1979年にアメリカと国交を樹立するなど、中国の国際社会における存在感が高まった。一方、孤立した台湾では、「台湾独立」を求める勢力、または、中華民国政府の支配地域を台湾に限定して国連加盟を目ざす勢力が台頭した。こうした動きに対して中国は、中国を分裂させようとする陰謀であると反発し、台湾が独立した場合は武力行使も辞さないという姿勢を示した。
中国と台湾の交流窓口機関は1992年にシンガポールで会談し、「一つの中国」の原則を確認したとされる。これは「92年コンセンサス」とよばれた。しかし、中国側がこれを「一つの中国原則を口頭で確認した合意」であると主張するのに対し、台湾側は「一つの中国の中身(中華人民共和国と中華民国)について、それぞれが述べあうことで合意した」と主張している。したがって、中台双方が一つの中国についてコンセンサス(共通認識)を達成したかどうかについて論争が続いている。
[矢板明夫 2016年3月18日]
(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)
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