1人による相続を一般に単独相続といい、単独相続を一子相続ということもある。しかし、日本で一子相続という場合は、ドイツにおける農民による農地の単独相続、すなわちアネルベンレヒトAnerbenrechtの訳語として用いられるのが普通である。もっとも、相続人は子供に限られるわけではないから、農民単独相続法あるいは農民単独相続権と訳すのが適当と思われる。
ドイツでは古くから原則として共同相続が行われていたが、封建時代には貴族の土地について単独相続が行われるようになった。農民の土地については、中世においても原則として共同相続が行われたが、農地の細分化を避けるため、農地の一子相続が広く慣行として認められるようになった。農民の一子相続法は、貴族の単独相続の場合と異なり、一子相続をした卑属に、他の卑属に対する補償の義務を認めた。19世紀の後半には、一子相続を認める立法がドイツの各地方で行われた。1874年のハノーバー法は、農地の所有者が任意にその土地を農場登記簿に登記すれば、その土地は一子相続の目的となり、そうでない場合は共同相続の目的となるものと規定した。1898年のウェストファーレン法では、農地の所有者がなんらの意思表示をしなくとも、官庁が適当な農地を一子相続の目的として登記することによって、農地は一子相続の目的となるものと定めた。これと前後してプロイセンでは、一定の農地は原則として分割することができず、一子相続の目的となることを法律で規定した。これらの一子相続法は強行ではなく、これと異なる遺言がある場合には適用されなかった。ところがナチス政権の樹立後、1933年に施行されたライヒ世襲農場法Reichserbhofgesetzでは、ドイツ全国について一定の農場の一子相続が強行的に規定された。
第二次世界大戦後、1947年に占領国の法律(管理委員会法45号)によってライヒ世襲農場法は廃止され、原則として同法以前の一子相続法が復活した。ただし、イギリスの占領地区については、47年、一子相続法として農場法Höfeordnungが制定された。
[高橋康之]
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