三不政策(読み)さんふせいさく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三不政策」の意味・わかりやすい解説

三不政策
さんふせいさく

1980年代から呼びかけられてきた中国の統一交渉台湾海峡両岸の直接的な交流に対する台湾の政策。中国が武力行使を放棄しないかぎり,台湾は「交渉しない,談判しない,妥協しない」 (中国語で,不交渉,不談判,不妥協という) の方針を堅持するというもの。しかし 80年代後半以降,台湾と大陸の経済貿易交流や人的往来の拡大によって,大陸は「海峡両岸関係協会」 (会長・汪道涵) ,台湾は「台湾海外基金会」 (会長・辜振甫) の半官半民の機構を設け,双方にかかわる問題の処理を始め,1990年5月には台湾の李登輝総統がその就任演説で,中国政府に対政府間交渉を呼びかけたことによって,この政策は実質的に放棄された。ただし李登輝の提案には,中国が,(1) 共産党一党独裁を廃止し民主政治,自由経済制度を採用する,(2) 台湾への武力行使を放棄する,(3) 台湾の実務外交を妨害しない,という新3条件がついており,それが三不政策に取って代った。その後両国の交流は活発化し,93年4月にはシンガポールで中台両国による台湾海峡両岸会談が実現した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「三不政策」の解説

三不政策(さんふせいさく)

1980年代の台湾の対大陸政策の原則。中国に対しては接触せず,交渉せず,妥協せずの三つの不を堅持する。70年代末からの中国の平和統一攻勢に対して,中国との交渉は台湾の安全を第一に対等な立場で行うべきであるという考えから立案された。しかし,民間レベルでの台湾と中国との交流,交易香港や第三国経由で進行し,台湾当局もこの状況を追認した。

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