改訂新版 世界大百科事典 「三輪玉」の意味・わかりやすい解説
三輪玉 (みわだま)
古墳時代に大刀(たち)に綴じつけた装飾品。上面に大小3個のふくらみが並び,下面は平らに作る。中央に丸玉を置き左右に半截玉をそえた形と説明することもできるが,その中心線は一方に偏し,かつ湾曲している。長さは3~5cmをふつうとし,金銅製品は上面のみの形を中空に作り,碧玉および水晶製品は充実して孔がない。着装には両端にある2ヵ所のくびれに糸をかけて綴じつけるものである。三輪玉という名称は,その形とは無関係に,奈良県三輪山から出土した例があるという理由で,明治期の考古学者が用いた仮称にすぎない。その用途も長く不明であったが,大刀形埴輪にこれを着装した表現のあることに気づいた後藤守一(しゆいち)が,ついに大刀の把(つか)にとりつけた勾金(まがりかね)の装飾であることを明らかにした。ただし勾金というのも,金属製ではなく,革などの腐朽しやすい材料で作ったものらしい。栃木県七廻り鏡塚古墳では銅製8個が,京都府宇治市坊主山1号墳では銅製13個の三輪玉が,それぞれ1口の大刀に付属して出土している。5世紀後半から6世紀にかけての古墳から副葬品として出土する。
執筆者:小林 行雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報