上場投資証券(読み)じょうじょうとうししょうけん(英語表記)exchange traded note

日本大百科全書(ニッポニカ) 「上場投資証券」の意味・わかりやすい解説

上場投資証券
じょうじょうとうししょうけん
exchange traded note

金融機関が発行する債券で、価格を特定指標と連動することを保証する金融商品。金融機関が自らの信用力を基に発行しており、裏づけとなる資産は保有しない。指標連動証券ともよばれ、英語の頭文字をとってETNと略称される。

 日本におけるETNは、2011年(平成23)4月に発足している。上場投資信託ETF)と同様、証券取引所に上場され、投資家は取引時間内であれば他の上場証券と同じように売買を行うことができる。ETNの発行主体は大手金融機関であり、価格が特定の株価指数や商品価格などの指標に連動することを保証している。具体的には、発行主体が自身の信用力を基に債券を発行し、日本預託証券(JDR:Japanese Depositary Receipt)として市場に上場する手法で商品化される。対象とする指標に連動させる点で、ETFとの類似性が認められるが、両者性質は大きく異なる。

 まず、商品の区分としては、ETFは投資信託一種と位置づけられるが、ETNは債券に分類される。また、ETFは目標とする指標を構成する銘柄を実際に組み入れて運用しているのに対して、ETNではあくまでも発行者が目標とする指標との価格連動性を保証しているのであって、証券の裏づけとなる現物資産(株式や商品など)が保有されているわけではない。このため、ETFには指標との間でトラッキングエラー(目標とする指数との連動性がずれること)が発生することもありうるが、ETNには基本的にそうしたずれが生じることはないし、資産を保有しないために運用管理コストも低減される。一方、ETFは現物資産を組み入れているから、万一運営会社が経営破綻(はたん)した場合も、信託銀行分別管理された保有資産の存在により、信用リスク回避もしくは低減することが可能である。これに対して、ETNは発行主体である金融機関の信用力だけに依存することから、投資家はつねに信用リスクにさらされていることになる。すなわち、発行主体が経営破綻に陥れば、ETNが価格下落にみまわれたり、無価値になったりするリスクが付随するのである。

 その半面、ETNは、資産の裏づけをもたないため、商品設計の自由度が高く、商品開発も短期間で行うことができる。たとえば、外国人に保有制限があり市場規模が小さな新興国の株式や、市場性の乏しい金属・農産物の商品の指標など、現実のファンドには組み入れがむずかしい対象の指標であっても、任意に組成することが可能である。また、対象資産を保有しないことは、マーケット・インパクト(売買に伴う価格変動)が生じないというメリットがある。

 ただし、ETNは典型的なハイリスク・ハイリターンの商品であるから、投資に際しては対象の指標の特性や発行者の信用力などについて、十分な検討が必要である。

[高橋 元 2018年8月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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