上水内郡(読み)かみみのちぐん

日本歴史地名大系 「上水内郡」の解説

上水内郡
かみみのちぐん

面積:六七〇・六一平方キロ
信州新しんしゆうしん町・小川おがわ村・中条なかじよう村・鬼無里きなさ村・戸隠とがくし村・豊野とよの町・牟礼むれい三水さみず村・信濃しなの

長野県の北部。長野市の西及び北部に続く地域。西の北安曇きたあずみ郡境に、南から長者ちようじや(一一六〇メートル)蕎麦粒そばつぶ(一〇六五メートル)物見ものみ(一四四一メートル)ひがし(一二四九メートル)奥西おくにし(一六一六メートル)堂津どうつ(一九二七メートル)乙妻おとつま(二三一五メートル)高妻たかつま(二三五二・八メートル)が連なり、長野市境に陣場平じんばだいら(一二五七・五メートル)大頭おおつむり(一〇九五メートル)飯縄いいづな(一九一七・四メートル)三登みと(九二三メートル)もとどり(七四四・四メートル)が西から東に連なる。郡内に虫倉むしくら(一三七八メートル)荒倉あらくら(一四三一・六メートル)西にし(二〇三〇メートル)戸隠とがくし(一九一一メートル)黒姫くろひめ(二〇五三・四メートル)斑尾まだらお(一三八二メートル)の一〇〇〇メートルから二三〇〇メートルの高山がそびえ立つ。

北安曇郡青具あおぐ峠に発した土尻どじり川は郡の南部小川村・中条村を経て東流しさい川に注ぐ。戸隠山から発して南流する裾花すそばな川は、鬼無里村で向きを変えて東流し、戸隠村を経て長野市に入る。同じく戸隠山に源を発して飯縄山・黒姫山の間を東流する鳥居とりい川は、信濃町・牟礼村三水村を経て豊野町で千曲川に注ぐ。このため、郡は水系の上から土尻川流域・裾花川流域・鳥居川流域の三地区に大別できる。

水内の名は「日本書紀」持統天皇五年八月の条に「辛酉遣使者祭竜田風神、信濃須波・水内等神」とあるのを初見とし、正倉院御物中の天平勝宝二年(七五〇)貢進の白布芥子袋に「信濃国水内郡中男作物芥子弐 天平勝宝二年十月」とあるのを郡名の初見とする。「和名抄」の国郡部に信濃国「水内郡」とあり、「美乃知」と訓じている。その語源について諸説がある。「嚢鈔」には「日本第一ノ高所当国(信濃)水落郡ハ遥カニ上リタル所也、凡信濃国ハ日本ノ中ニハ四十丈高国也、当国水落郡ハ第一ノ高所也」と記して「水落」と説き、「大成経」に「治水内海」とあるをもって湖と解釈する「信濃地名考」説もある。これらに対して蛟すなわち「ミヅチ」の意味であって、蛟竜を祀ったものに基因するとの説もある(「延喜式神名帳考」信濃古文献考)

〔原始〕

郡の北端にある野尻湖の湖底及び岸辺から無土器時代の石器が多量に出土し、かつ石器の形式も豊富で一時期を画し、湖底からはナウマン象の化石、大角鹿の化石をも出土して、注目されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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