世継の翁(読み)よつぎのおきな

改訂新版 世界大百科事典 「世継の翁」の意味・わかりやすい解説

世継の翁 (よつぎのおきな)

平安時代後期に成立した歴史物語《大鏡》に登場する架空の人物で,歴史の語り手。万寿2年(1025)5月,雲林院(うりんいん)の菩提講に集まった人々は,講師の登壇を待つ間の雑談に興じていたが,その中にかつて宇多天皇の母后班子女王に仕え,当年190歳になる大宅世継おおやけのよつぎ)という翁があり,藤原忠平の小舎人童であったというこれまた百数十歳の夏山繁樹とその妻を相手に,昔の思い出を語り始めた。《大鏡》はこの3人に若侍を加えた対話の形で歴史叙述を進めている。世継の翁に歴史を語らせる構想は,《源氏物語》雨夜の品定めの段に倣ったと考えられ,空海の《三教指帰(さんごうしいき)》,《史記》封禅書の李少君,法華八講の形式などに示唆を受けたと見る人もある。大宅世継という名は,世々の事を継々に語る翁という意味とされるが,そのほか大御代の万歳を祝言する翁という意味があると考えられ,さらに古代語り部などに通ずる寿詞(よごと)の語り手の性格を伝えるものとも見られている。
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