寿詞(読み)ヨゴト

デジタル大辞泉 「寿詞」の意味・読み・例文・類語

よ‐ごと【寿詞/吉言】

天皇の御代の長く栄えることを祝う言葉。また、一般に、祝いの言葉。賀詞
祈願の言葉。
「―をはなちて立ち居」〈竹取

じゅ‐し【寿詞】

祝いの気持ちを述べた言葉や文章、また、詩歌。よごと。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「寿詞」の意味・読み・例文・類語

よ‐ごと【寿詞・吉言】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「よ」は「善し」の語幹。「よごと(善事)」から )
  2. 寿(ほ)ぎ祝うことば。祝いことば。特に、天皇の御代の長久繁栄を祝うことば。
    1. [初出の実例]「巨勢大臣をして賀(ヨコト)奉らしめて曰さく」(出典日本書紀(720)白雉元年二月(北野本訓))
  3. 祈ることば。のりとごと。
    1. [初出の実例]「かぢとりの御神きこしめせ〈略〉いまより後はけの一筋をだに動かしたてまつらじと、よことをはなちてたちゐ、泣泣よばひ給ふ事千度ばかり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))

じゅ‐し【寿詞】

  1. 〘 名詞 〙 祝寿こころを述べた詩歌や文章。また、「よごと(寿詞)」の音読語。
    1. [初出の実例]「賓客を会し寿詞寿文を以て賀するなどの事は」(出典:授業編(1783)九)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「寿詞」の意味・わかりやすい解説

寿詞 (よごと)

ヨゴトとは〈善い言葉〉の意で,賀詞とも書く。いわゆる言霊(ことだま)信仰に支えられて寿(ことほ)ぎ祝う言葉である。広義には《古事記》《日本書紀》の〈ほき歌〉や〈酒楽(さかほかい)の歌〉のごとき歌や,《古事記》の櫛八玉(くしやたま)神の〈御饗寿き(みあえほき)の詞(ことば)〉や《日本書紀》顕宗天皇条の〈室寿き(むろほき)の詞〉のような詞を含めるが,狭義には《延喜式》巻八〈祝詞〉所収《出雲国造神賀詞(いずものくにのみやつこのかむよごと)》と,藤原頼長の《台記別記》所収の1142年(康治1)奏上の《中臣寿詞(なかとみのよごと)》との2編をさしていう。前者出雲の神々の祝福の言葉を国造が奏上し,後者も《神祇令》に〈凡(およ)そ践祚(せんそ)の日,中臣天神の寿詞を奏す〉とあるように,神の祝福の言葉を中臣氏が奏上した。それで善い言葉すなわちヨゴトといわれた。祝詞は神が呪(じゆ)的に宣言する言葉である点ヨゴトと共通するが,祝詞は神に向かって言う場合もある点がヨゴトとは異なる。ヨゴトはのちに〈祈る言葉〉の意ともなった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「寿詞」の意味・わかりやすい解説

寿詞
よごと

祭の儀式に唱えられる祝詞(のりと)のうちで、とくに祝賀の意味が濃いものを寿詞という。賀詞、吉詞とも書き、また「ほぎごと」とも読む。個人的な祝賀に用いるものとしては、新築の住宅を祝賀する「室寿詞(むろほぎのことば)」が伝えられている。公事(くじ)に用いられるものは、現御神(あきつみかみ)なる天皇に奏上する祝賀の詞である。践祚大嘗祭(せんそだいじょうさい)の辰日(たつのひ)の節会(せちえ)に神祇官(じんぎかん)の中臣(なかとみ)氏が奏上する「中臣(なかとみの)寿詞」は、「天神之(あまつかみの)寿詞」とも称し、神代以来の吉事を述べて御代(みよ)の長久を祝福するものである。藤原頼長(よりなが)の日記である『台記(たいき)』の別記に、近衛(このえ)天皇の康治(こうじ)1年(1142)の大嘗祭にあたり、神祇大副大中臣清親(おおなかとみのきよちか)が奏上した寿詞が収録されている。また『延喜式(えんぎしき)』祝詞のなかに載せる「出雲国造神(いずものくにのみやつこのかん)寿詞」は、出雲国造が新任されたとき、朝廷に参向して奏上する御代祝(みよほ)ぎの賀詞である。

[土岐昌訓]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「寿詞」の意味・わかりやすい解説

寿詞【よごと】

善い言葉の意で,賀詞とも記す。祝詞(のりと)に対し,天皇の長寿・隆盛を祝福し,臣従を誓う善言・吉言。言霊(ことだま)信仰に基づく,呪言(じゅげん)的・神言的要素をもつ。中臣氏の〈天津神の寿詞〉,《延喜式》の〈出雲国造神賀詞(いずものくにのみやつこのかむよごと)〉などが代表的。
→関連項目ことほぎ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「寿詞」の意味・わかりやすい解説

寿詞
よごと

賀詞とも書く。祝賀の意を述べる朗読文。祝詞 (のりと) と同じく言霊信仰から発するが,祝詞と異なり,臣下から天皇に奏上し,天皇の長寿と治世の繁栄を祝福する善言,吉言と解される。また各民族の祖の王権への従属の伝承が語られることがあるので,単なる祝言ではなく,従属の誓詞としての性格をも含んでいる。代表的なものとしては『中臣寿詞』『出雲国造神賀詞』などがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

普及版 字通 「寿詞」の読み・字形・画数・意味

【寿詞】じゆし

長寿の祝。

字通「寿」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android