中国野菜(読み)ちゅうごくやさい

精選版 日本国語大辞典 「中国野菜」の意味・読み・例文・類語

ちゅうごく‐やさい【中国野菜】

〘名〙 中国産の野菜。特に、日本に昭和五〇年(一九七五)頃以後に伝来したものをいう。青梗菜(チンゲンサイ)・塌菜(タアサイ)など。

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デジタル大辞泉 「中国野菜」の意味・読み・例文・類語

ちゅうごく‐やさい【中国野菜】

中国産の野菜。特に、日本に昭和50年(1975)ごろ以降に伝来したものをいう。青梗菜チンゲンサイ塌菜ターツァイなど。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中国野菜」の意味・わかりやすい解説

中国野菜
ちゅうごくやさい

中国を原産あるいは改良の中心地とする野菜を中国野菜と総称する。中国の野菜の歴史は古く、6世紀の『斉民要術(せいみんようじゅつ)』には、すでに50種余りの野菜の栽培法が記述されている。その多くは日本にもたらされ、その後も中国から伝来し日本の野菜となったものは多い。したがって、現在、中国野菜として扱われるのは1975年(昭和50)以降に導入された新来の種類である。おもな中国野菜にはハクサイ類(タケノコハクサイチンゲンサイパクチョイタアサイ)、カラシナ類(セリホン、ザーサイ、根カラシナ)、ダイコン(青長(あおなが)大根、紅心(こうしん)大根、紅丸(べにまる)大根、紅長(べになが)大根)、ステムレタス(茎チシャ)、食用ナズナ、豆苗(トウミヤオ)(エンドウの苗)、コウサイ(コエンドロ)、キンサイ、花茎やつぼみを食べるコウサイタイ、サイシンカイランハナニラ、金針菜(チンチエンツアイ)(カンゾウ)、果菜類のナス、シロウリ、ハミウリ、トウガン、水生野菜のマコモオオクログワイなどがある。

 なお、エンサイヒユナバイアム)、ツルムラサキ、ヘビウリ、トカドヘチマなども中国野菜とよばれることがあるが、これらは厳密には、東南アジアやインドを中心とする南方野菜である。

[湯浅浩史]

料理

中国は料理の種類が豊富であり、それに応じて野菜も使い分けられる。青菜は油で炒(いた)めることが多いが、高熱の油で瞬間的に炒める爆(パオ)あるいは油爆(ユーパオ)は、緑色が鮮やかに仕上がり、栄養が損なわれない。時間をかけた油炒めの油溌豆芽菜(ユーポートウヤーツアイ)は、もやしに熱したごま油を何回もかける料理。ほかにも手間をかける野菜料理に、ハクサイなどの野菜をとろ火で長時間煮る扒(パー)、ピーマンやキュウリやトウガンの中身をくりぬき詰め物をした鑲(シャン)、塞(ソー)、盅(チョン)がある。なかでもトウガンに肉や野菜を詰めて蒸した冬瓜盅(トンコワチヨン)は逸品で、祝い料理にされ、トウガンの表面にめでたい文字を彫って飾る。食卓の飾りには、色とりどりのダイコンをバラの花の形などに切って使う。蘿蔔糕(ルオポカオ)は、細かく刻んで煮たダイコンを粳米(うるちまい)をひいたのと混ぜて蒸した餅(もち)。野菜の保存には乾燥と漬物がある。カンゾウのつぼみを乾燥させた金針菜はスープ(湯(タン))の実として入れる。北京(ペキン)では輪切りの乾燥ナスもつくられている。有名なザーサイ(榨菜)は、茎を陰干しし、岩塩で漬け、トウガラシショウガサンショウウイキョウ、カンゾウ(マメ科)などで風味を出す。漬物は中国も長い伝統があり、すでに6世紀の『斉民要術』に、鹹菹(シエンツー)(塩漬け)、卒菹(ツーツー)(即席漬け)、酢菹(ツーツー)(糠(ぬか)漬け)、蔵梅(ツアンメイ)(梅漬け)、湯菹(タンツー)(炒め酢漬け)、芥菹(チエツー)(からし漬け)、瓜菹酒(コワツーチウ)(瓜(うり)酒漬け)、など37の漬物が記述されている。

[湯浅浩史]


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改訂新版 世界大百科事典 「中国野菜」の意味・わかりやすい解説

中国野菜 (ちゅうごくやさい)

中国には多くの野菜が栽培されており,今までにも日本に数多くの野菜が導入されている。日本の野菜の中にも,日清戦争(1894-95)や日露戦争(1904-05)に従軍した軍人が種子を持ち帰った野菜が多く,結球白菜,夏胡瓜(なつきゆうり),甜瓜(まくわうり),南瓜(かぼちや)などのいくつかの品種はそのころ日本に入ってきたものである。また,ホウレンソウの禹城(うじよう)やキャベツの葉深(ようしん)などは,第2次大戦前後に中国から導入されたもので,日本の野菜の品種改良に役だった品種といえる。また,漬菜類の多くも戦争中すでに中国から導入され,日本の野菜として利用されている。最近,とくに中国野菜が注目されるようになったのは,日中国交正常化などの国際社会の変化から再び中国が脚光をあびたことや,食生活の多様化など社会的な刺激が多くなったことから,まだ日本の野菜に成りきっていないものの種子が再導入されるようになったためである。中国は国土も広く,国内でも地域により気候風土も異なるため野菜の種類が多い。中国の19世紀の《植物名実図考》には181種類もの野菜が記録されている。このうち現在も実用種として使われているものは103種類ぐらいあるといわれている。この中にはすでに日本に入ってきているが,一般化していないものも多い。たとえば苦瓜(にがうり)(ツルレイシ)などは中国では重要野菜であるが,日本では沖縄県や鹿児島県などの一部の県でしか作られていなくて,重要野菜にはなっていない。また,神奈川県横浜市の農家では,明治初期から代々中国野菜を作り,横浜の中華街の八百屋に出荷している人もいる。したがって,今後も一般化する野菜と特殊需要のものとに分かれると思われる。

 次に最近注目されている中国野菜の種類について述べる。シャオツァイ(紹菜)はハクサイの一種で細長く,タケノコハクサイといわれるもの。パクチョイ(白菜)は体菜類で変種が多く,白軸と青軸とがあり,青軸の方はチンゲンサイ(青梗菜)と呼ばれる。タアサイ(塌菜)はタクツァイ,タクチョイともいい,日本ではキサラギナ(如月菜)という。チエラン(芥藍)はカイランともいい,キャベツやブロッコリーの仲間で,とうを立たせて茎とつぼみを食べる。フォンツァイタイ(紅菜苔)は茎や葉脈が赤紫色になり,とうを立たせて茎葉とつぼみを食べる。エンツァイ(甕菜)はヨウサイまたはカンコンともいい,ヒルガオ科のつる性野菜。インサイ(胡荽)は異名が多く,エンスイともいい,日本ではコエンドロという。タンパラはバイアムともいい,日本ではヒユナ(莧菜),ジャワホウレンソウともいう。そのほか,ツルムラサキ,チンツァイ(芹菜),ダイコン類などがおもに導入されている。利用は油いためや煮食が多い。
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百科事典マイペディア 「中国野菜」の意味・わかりやすい解説

中国野菜【ちゅうごくやさい】

中国の野菜は早くから日本に伝わっており,さらに日清・日露の戦争に従軍した農村出身の軍人が結球白菜や夏胡瓜(きゅうり),南瓜(かぼちゃ)などの種子を持ち帰ったり,第2次大戦後には多くの漬菜類が導入されたりして,日本の野菜として定着している。近年,中国との関係の深化や日本の食生活の多様化にともない,さらに新しい中国野菜が空輸されたり,国内で栽培されるようになった。よく知られているチンゲンサイ(青梗菜)は結球しない小白菜の仲間で,葉柄の幅が広く淡緑色をしている。パクチョイ(白菜)も同類であるが,葉柄は純白。タアサイは葉面が縮れた濃緑色の菜で,葉柄は丸みがある。トウミャオ(豆苗)は新芽をとるため専用に栽培されたエンドウの若いツル先と葉を摘んだもの。ニンニクの芽はニンニクの花茎を切りとったもの。そのほか白菜の一種で細長いシャオツァイ(紹菜)や,とう立ちした茎やつぼみを食べるフォンツァイタイ(紅菜苔),香りの強い香菜(コエンドロ)などがある。いずれも炒めものをはじめ,おひたしや汁の実などに利用される。
→関連項目野菜

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