コエンドロ(読み)こえんどろ(英語表記)coentro ポルトガル語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コエンドロ」の意味・わかりやすい解説

コエンドロ
こえんどろ
coentro ポルトガル語
coriander 英語
[学] Coriandrum sativum L.

セリ科(APG分類:セリ科)の一、二年草。英語名によってコリアンダーともいう。地中海沿岸原産で、香辛料として栽培される。茎は高さ30~90センチメートルで、まばらに分枝する。葉は柄の長い羽状複葉でやわらかい。初夏、枝先に小さい白色花を複散形花序につけ、花序の周辺の花の外側の花弁が大きい。果実は球形で、径3~5ミリメートル、2個の半球状の分果が対(つい)になっている。9月ごろ熟し、レモンとセージをあわせたような芳香をもつ。未熟な果実や茎葉には特有の臭気があり、コリアンダーは、ナンキンムシのにおいに似ていることから、ナンキンムシkorisのアニスannonという意味でCoriandrumの属名ができた。

 現在はインド、インドネシア、マレーシア、さらにハンガリーポーランドなどの東部ヨーロッパ諸国、アルゼンチン、アメリカなどが主産地である。日本へは10世紀以前に中国から渡来し、江戸時代にはポルトガル人が伝えたので、ポルトガル語のcoentroからコエンドロとよばれるようになったらしい。初めは日本人の嗜好(しこう)にはあわず、普及していなかったが、第二次世界大戦後はハーブの一つとして、コリアンダーの名で一般に知られるようになった。さらにエスニック料理の普及により、タイ語名のパクチー、中国語名のシャンツァイ(香菜)の名でも知られるようになった。

[星川清親・齋藤 浩 2021年11月17日]

利用

春または秋に種子を播(ま)き、若苗の茎葉を摘んで利用する。スープ、サラダ、和(あ)え物、油炒(いた)め、肉料理、塩漬けなどに用いる。中国料理のほか、タイ料理のトムヤムクンにも欠かせない。果実はリナロールを主成分とする精油0.8~1%、ペトロセリン酸を主とする脂肪10~20%を含み、胡荽子(こずいし)または胡荽実といって健胃、駆虫薬とする。香辛料としての利用も広く、果実のまま、または粉末にしたものが市販され、果実はピクルスソーセージに、粉末は魚料理のソース、カレー、キャンディー、パン、クッキーに混ぜて利用する。古代ローマ時代には肉の保存に使われていたし、聖書にも出ていることから、かなり昔から使われていたことがわかる。中世の愛の媚薬(びやく)としても有名である。

[星川清親・齋藤 浩 2021年11月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コエンドロ」の意味・わかりやすい解説

コエンドロ
Coriandrum sativum; coriander

セリ科の一年草で,南ヨーロッパ原産。全草に独特の香気があり,薬味とするため地中海地方をはじめアジアや南アメリカなどで広く栽培される。茎は高さ 30~60cmとなり,まばらに分枝する。根葉は大きな羽状複葉,茎葉は裂片が細い羽状複葉で,ともに柄の基部は鞘となる。夏に,枝端に散形花序を出し,5弁の小さな白花が群がってつく。日本へは江戸時代に香料として渡来,コエンドロの名もポルトガル語の coentroに由来する。英語のコリアンダーと呼ばれることも多い。

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