律令時代の諸国からの貢納品の一種。律令では中男(17歳から20歳の男子,大宝令では少丁)に正丁(21歳から60歳の男子)の4分の1の調を課し,また正丁には調のほかに調副物として種々のものを納めさせていた。しかし717年(養老1)には,調副物を廃止するとともに中男の調も止め,その代りに,中央官庁が必要とする物品の必要量を概算して諸国に貢納を命じた。諸国では中男を使役してそれらの物品を調達し,中男が不足の場合には正丁の雑徭(ぞうよう)をあてて補うこととした。《延喜式》に記された諸国の中男作物の品目名をみると,全体としては律令に規定された調庸物と同種のものが多い。中男作物の実例としては,正倉院御物のなかに芥子(からし)をつつんだ布袋や,平城宮跡から発掘された木簡が数点あり,また正丁の雑徭をあてたと考えられる〈正丁作物〉の木簡も発掘されている。これらの布袋や木簡の書式をみると,国郡(郷)名しか記さないものが多く,また個人名を記した場合にも,戸主名・戸口名を明記する調庸の場合と異なっていることが注目され,中男作物が国郡司の指揮する労役によって調達されたことを推測させる。
執筆者:吉田 孝
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…なお調にそえて正丁には調副物を課したが,調副物は正調の30分の1ほどの量で,その品目は染色,工芸関係の材料や製品を主とし,食料品も加工材料用であったらしい。717年(養老1)に調副物と中男の調を廃止し,国郡司が中男を役して中央官庁で必要とする物品を作ったり,集めたりする中男作物(ちゆうなんさくもつ)の制を施行した。 調は律令財政の最も重要な収入源であり,官人の給与(位禄,季禄)にもあてられたので,その品質の低下や未納に対して,政府は厳しい態度でのぞんだが,品質の低下や未納が増加してくると,それを補うために,交易雑物(ぞうもつ)(出挙(すいこ)の利稲で調庸物に相当する物品を購入する)制度が展開していった。…
※「中男作物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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