芥子(読み)ケシ

デジタル大辞泉 「芥子」の意味・読み・例文・類語

け‐し【×芥子/罌粟】

ケシ科越年草。高さ約1.5メートル。葉は白みを帯び、縁にぎざぎざがあり、基部は茎を包む。初夏、下を向いていたつぼみが上向き、大形の紅・紫・白色や絞りの4弁花を開く。種子は小さくて黒色、料理に用いる。白花の未熟の実からは阿片あへんの原料をとるが、日本では栽培などが厳しく制限されている。仲間にはヒナゲシオニゲシなどがある。 花=夏》「―ひらく髪の先まで寂しきとき/多佳子」
カラシナの種子。香辛料として利用。また仏寺で護摩ごまをたくときに用いる。かいし
[類語]雛芥子虞美人草ポピー

からし【芥子/×芥/辛子】

形容詞「から(辛)し」の終止形から》カラシナの種子を粉にした香辛料。黄色で辛く、水で練って用いる。また、カラシナの別名。
[類語]唐辛子洋芥子和芥子七味唐辛子鷹の爪マスタードタバスコパプリカ

かい‐し【×芥子】

カラシナの種子。乾燥させ粉末にして香辛料のほか、薬用にする。がいし。

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精選版 日本国語大辞典 「芥子」の意味・読み・例文・類語

け‐し【芥子・罌粟】

  1. 〘 名詞 〙
  2. カラシナの種子。その粉末を香辛料や薬用とする。また、辛味に煩悩を調伏する力があるとし、護摩をたくのにこれを加えて用いた。かいし。
    1. [初出の実例]「一七日の間に、焼く所の芥子は七斛有余なり」(出典:将門記(940頃か))
  3. ケシ科の一、二年草。ギリシアおよび西南アジア原産。中近東、インド、中国などで栽培されている。日本には足利時代にインドから津軽地方に伝来したらしく、天保年間(一八三〇‐四四)に関西にも広がり、はじめ「津軽」と呼ばれた。茎は直立して高さ八〇~一七〇センチメートルになる。全体に白粉を帯び、葉は互生し長さ七~一五センチメートルの長楕円形で茎を抱き、縁に不規則な切れ込みがある。初夏、枝の先端に白、紫、紅や絞りなどの四弁花を開く。果実は球形で黄褐色に熟す。未熟のものからはアヘンの原料になる乳液を採り、種子からはけし油をつくる。漢方では果皮を罌粟殻(おうぞくこく)といい、鎮咳(ちんがい)・鎮痛・下痢止めに用いる。日本では「麻薬取締法」「あへん法」によって栽培が制限されている。漢名、罌粟、罌子粟

▼けしの花《 季語・夏 》

▼けしの実《 季語・夏 》 〔伊京集(室町)〕

  1. [初出の実例]「ちるときの心やすさよ米嚢花(ケシのはな)〈越人〉」(出典:俳諧・猿蓑(1691)二)
  2. ( 「けしばかり」「けしほど」の形で ) カラシナやケシの種子がきわめて小さいところから、きわめて小さなもの、また、ごくわずかなもののたとえに用いる。けし粒。
    1. [初出の実例]「功徳大なること地の如く、己が為に一切に施せば、報を得ること芥子の如し」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
    2. 「年貢所当におきては、けしほどものこらず、横領する間」(出典:曾我物語(南北朝頃)一)
    3. [その他の文献]〔法華経‐提婆達多品〕
  3. (よろい)などに、こまかい鋲(びょう)をけし粒のついたように打って、飾りとしたもの。
  4. けしだま(芥子玉)」の略。
  5. ( そのさまがの果実に似ているところからいう ) 「けしぼうず(芥子坊主)」の略。
    1. [初出の実例]「ことしよりつむりにけしを置そめて千代万代の数とりにせん」(出典:狂歌・徳和歌後万載集(1785)七)
  6. けしかむろ(芥子禿)」の略。
    1. [初出の実例]「外面にしげき市人と、共に売り来るけしの花」(出典:歌謡・松の葉(1703)二・しののめ)
  7. ( 頭髪を芥子坊主のようにしていることから ) 唐人をあざけっていった語。
    1. [初出の実例]「丸山の畑に芥子の種を蒔」(出典:雑俳・柳多留‐一二三(1833))
  8. 婦人が髪を結うのに、頭頂の毛を少しばかり束ね結ぶもの。の果実に類似しているところからの名。
    1. [初出の実例]「ぐるり落し〈略〉是は正中の芥子を取るのみにて鬂髩一つに出す也」(出典:随筆・守貞漫稿(1837‐53)一一)
  9. けしぐくり(芥子括)」の略。

からし【芥子・芥・辛子】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形容詞「からし」の終止形の名詞化 ) =からしな(芥子菜)本草和名(918頃)〕
  3. 芥子菜の種子。芥子の実。また、それをすって粉にしたもの。黄色で辛味(からみ)が強い。水で練り、香辛料として用い、また芥子泥(かいしでい)を作って局所に塗布し、引赤薬とする。民間で堕胎に用いた。俗説に、意地の悪いものが練ると辛味がつよくなるという。粉末がらし。かいし。
    1. [初出の実例]「芥子四斗直」(出典:正倉院文書‐東大寺写経所解案・天平二〇年(748)七月一〇日)
    2. 「幸に我が西隣に調魚へきよい金虀のからしなんどがある程にぞ」(出典:四河入海(17C前)一三)

かい‐し【芥子】

  1. 〘 名詞 〙 芥菜(からしな)の種子。また、その種子を粉末にした香辛料。からし。
    1. [初出の実例]「即芥子納須彌之説也」(出典:童子問(1707)下)
    2. [その他の文献]〔斉民要術‐種蜀芥蕓薹芥子〕

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改訂新版 世界大百科事典 「芥子」の意味・わかりやすい解説

芥子 (からし)

カラシナの種子,また,それを粉末にした香辛料。和がらし,ジャパニーズマスタードなどと呼ばれるが,マスタード(洋がらし)とは植物学上別種である。奈良時代すでにからし粉が用いられていたことは,《正倉院文書》中に臼でついた意の〈舂芥子〉の語があることで明らかである。《延喜式》には甲斐,信濃,上総,下総から中男作物などとして貢納され,調理面では現在よりもはばひろく利用されていたように思われる。酢やみそに加えてなますやあえ物に使ったことがはっきりするのは室町時代のことになるが,食生活の洋風化が急激に進んだ第2次大戦後まで,日本人にとってはきわめて重要な香辛料であった。江戸時代にはカツオの刺身はからしで食べるものとされた時期があったようで,1714年(正徳4)の江島事件三宅島へ流された俳優生島(いくしま)新五郎が江戸の2世市川団十郎にあてて〈初松魚(はつがつお)からしがなくて涙かな〉と書き送った話が伝えられている。

 和がらしの辛みは,配糖体シニグリンが酵素ミロシナーゼの作用で加水分解されて生ずるアリルイソチオシアネートによるもので,酵素は40℃で最も活性化するため,水でなく温湯で溶くほうがよい。独特の香味が日本料理で珍重されるが,洋がらしと違ってえぐみがあるので,溶いたからしの上に湿った和紙を密着させて湯をそそぎ,その中へ真っ赤におきた炭火を投入,ふたをしてあくぬきをする。この操作がめんどうなので,近年ではその必要のない洋がらしがひろく使われるようになっている。
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百科事典マイペディア 「芥子」の意味・わかりやすい解説

芥子【からし】

カラシナの種子を乾燥粉末にした刺激性の強い香辛料。洋がらし(マスタード)よりあくが強く,あく抜きして使う。近年ではその必要のない洋がらしが普及,おでん,納豆,みそ椀の薬味,漬物,和物(あえもの)等,日本料理に広く使用されている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「芥子」の意味・わかりやすい解説

芥子
からし

カラシナ類の種子を粉末にしたもの。黄色の種子は直径 1.5mmぐらいの球形。配糖体シニグリン,加水分解酵素ミロシンを含む。水を加えておくと酵素が働き,からし油を生じる。カレー粉,粉わさびなどの原料とするほか,サラダや各種の料理に用いられる。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「芥子」の解説

芥子 (ケシ)

学名:Papaver somniferum
植物。ケシ科の越年草,園芸植物,薬用植物

芥子 (カラシ)

植物。アブラナ科の越年草,園芸植物,薬用植物。カラシナの別称

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「芥子」の意味・わかりやすい解説

芥子
かいし

カラシナ

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世界大百科事典(旧版)内の芥子の言及

【カラシナ(芥子菜∥芥菜)】より

…耐寒性も比較的強いので,主に秋まきして晩秋または越冬後早春に収穫する。種子を生薬では芥子(がいし)という。配糖体シニグリンsinigrin(ミロン酸カリウム)を含み,加水分解によりイソチオシアン酸アリルallyl isothiocyanateを生じ,これが皮膚や粘膜を刺激する。…

※「芥子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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