知恵蔵 「中距離核戦力条約」の解説
中距離核戦力条約
その後、2007年にロシア・プーチン大統領が、規制対象を米ロの2国から多国間に拡大すべきと主張。米国防長官との会談では、条約破棄の可能性も示唆した。しかし、10年に米・オバマ大統領とロシア・メドベージェフ大統領が、新戦略兵器削減条約(新START)を締結(翌11年発効)。核削減の流れを後戻りさせることはなかったが、双方とも条約抵触の疑いがある弾道・巡航ミサイルの開発は止まらず、互いに抗議や条約違反の申し立てを繰り返してきた。
17年に誕生した米・トランプ政権は、ロシアの新型ミサイル9M729が条約に違反していると警告。これにロシア・プーチン大統領が対抗姿勢を強めると、18年10月トランプ大統領は条約から離脱する意向を表明し、19年2月ロシアに正式に通告した。プーチン大統領もこれを受け、離脱を表明。両国とも大量のINFを保有・開発している中国に脅威を抱いており、条約破棄は「新軍事大国」中国への対抗を念頭に置いたものとも指摘される。規定では、通告から6カ月後に失効する(2019年2月末時点)。
(大迫秀樹 フリー編集者/2019年)
中距離核戦力条約
(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報